大正12年(1923)/木版多色刷
28.3×20.7cm
SUMMARY作品解説
大正11年(1922)年の春、巴水は次回作の取材のために九州方面へ旅行し、そこから広島、岡山、神戸、大阪、京都と巡る大旅行を敢行した。この旅行の成果として出版されたのが「日本風景選集」のシリーズで、全36図で完結という大作となった。しかしこのシリーズの32図目を制作後、関東大震災の発生により、版元である渡邊版画店は焼失し、巴水もこれまでの画業の成果である写生帖を全て失ってしまい、刊行は中断される。その後、巴水の102日間に及ぶ写生旅行を経て、その新たなスケッチをもとに、このシリーズは、大正15年(1926)に完結した。 この作品は震災前に刊行された1点で、坂の町・長崎の石畳が象徴的に描かれている。その手前には、桜であろうか、花の枝を担いだ女性が、画面に華やかな雰囲気を与えている。
ARTIST作家解説
川瀬巴水
Kawase Hasui1883-1957
東京に生まれ、同地で没する。本名は文治郎。白馬会洋画研究所で洋画を学び、岡田三郎助に指導を受ける。明治43年(1910)鏑木清方に入門。同門の伊東深水『近江八景』に触発され、大正3年(1914)から新版画の制作に手をそめる。同年渡邊版画店から「塩原おかね路」など版画3点を出版。同9年(1920)の『旅みやげ第1集』で版画家としての地位を確立する。「東京十二題」(大正8年)、「日本風景選集」(昭和元年)など、一貫して風景版画に取り組み続け、旅情・叙情溢れる新境地を開拓した。昭和28年(1953)には文化財保護委員会により、「増上寺の雪」の制作過程が記録された。
同じ作家の作品一覧
INFORMATION作品情報
EXPLORE作品をもっと楽しむ
全国の美術館・博物館・アーカイブ機関を横断したプラットフォームでコンテンツを検索・閲覧でき、マイギャラリー(オンライン展覧会)の作成などができます。