すぐれたアートには、何か永遠なるものと人々とを結び合わせ、
人間を高みへといざなう力があります。
しかしその力は、もともと万人の中にあらゆる美(アート)が
本来等しくそなわっているからこそ発揮されるのです。
「有限な自己を超えた永遠なるものへの祈りと融合によって初めて、自力も十全に働く。
しかし、その十全なる力は本来、自身の中にあったものである」
(創立者・池田大作先生のハーバード大学講演「21世紀文明と大乗仏教」より)。
私たちはアートと人間の関係を考える上においても、
この創立者が示した重要な視点を根本にしていきたいと思っています。
すなわち、アートやその作者の中にのみ美があって、
人々が何かを与えられる側にいるのではありません。
誰しもの中に本来、美というものが等しくそなわっているのだと私たちは考えます。
すぐれたアートとは、それを開き、呼び覚ますことができるものなのです。
自身の中に本来ある美を発見することは、
そのまま他者の中にも等しく美が
そなわっていることへの自覚と尊敬につながります。
他者の中にある美を敬うことが、
今度は自身の中にある美への自覚と信頼をうながします。
アートとの出あいを通して、人々が自分自身の中にある美の扉を開き、
心と行動を変容させていくこと。自然環境まで含めた
すべての他者の中にある美を敬い、共生と対話への足場をつくっていくこと。
東京富士美術館は、
創立者の思想にもとづいたこの美へのまなざしを、
あらゆる活動の基軸としてまいります。
目指す世界の姿と、そのための取り組みとして4つのヴィジョンを制定しました。
この4つのヴィジョンは、全世界的な運動であるSDGs(持続可能な開発目標)の項目ともつながるものです。
東京富士美術館は社会とその発展に寄与するため、
人類共通の財産として有形無形のアートを収集・保存し、作者の心、
守り伝えてきた先人の営みを継承して、調査研究、展示普及につとめます。
あらゆる人々が敬意をもって迎え入れられ、快適に過ごせる美術館をめざします。
また、創意工夫をもって、アートに触れる機会の不均衡の解消につとめます。
そして、地域から世界まで、さまざまな人々と連携し、歩み寄り、
理解を深め合いながら社会課題を共有するとともに、
美術館の活動を通して多様性を尊重する人間性豊かな社会の創出に寄与します。
アートは人々を互いに近づけ結合させます。
世界を覆う不信や暴力、分断を打ち破るものこそ、アートの力です。
国境や民族、宗教などの差異を越えて、互いの中に等しく美(アート)を見いだしたい。私たちはアートの交流を通して、人類の平和の礎を築いていきます。
多様な価値観との出あいによって、人は自身の持つ多様性の窓を開き、
想像力(イマジネーション)と創造力(クリエイティビティ)を育むことができます。
そして、それは他者の困難に同苦し、人生と社会の試練を乗り越える力となります。
私たちは、子どもたちをはじめ、あらゆる人々に開かれた学びの場としての
美術館の役割と使命に挑戦していきます。