明治42年(1909)/絹本着色 軸装(双幅)
109.3×39.8cm(各)
SUMMARY作品解説
左右を隔て、各々岩を伝って落ちる一条の滝を中心に、右幅に咲き誇る桜、左幅に散りゆく楓を配し、水煙けむる春秋の風情を描き分けている。さらに二筋の滝の流れは下方へ溶けこむかのように飲み込まれ、画面外に広がる空間をも予感させる巧みな効果がみられる。滝の流れに輪郭線は見られず、ここには「朦朧体」と揶揄された没線描法の成果が見られる。ただし桜や楓の明快な色彩表現や岩肌のブロックのような幾何学的な描写は、この頃春草が取り組んでいた脱没線描法の試みを示す。同年に描かれた《紅葉山水》(永青文庫蔵)にも同様の試みがなされている。春草が明治41年(1908)に眼病を発病した後、一時小康状態を取り戻した束の間の期間に描かれた最晩年の佳品といえよう。
ARTIST作家解説
菱田春草
Hishida Shunso1874-1911
長野に生まれる。17歳で上京し、はじめ結城正明に習い、東京美術学校に入学。上級生に横山大観、下山観山らがいた。卒業制作《寡婦と孤児》(東京芸術大学大学美術館蔵)では最高点を獲得。明治31年(1898)の岡倉天心排斥運動で大観らと下野し、日本美術院創設に参加。以後、「没線描法」の作品を発表するも世間から「朦朧体」と揶揄される。同36年(1903)から2年ほどかけ大観とインド、アメリカ、ヨーロッパを歴訪し、現地で作品展を開催した。帰国後、院の五浦移転に伴い同地に移る。同41年(1908)、眼病を患い東京に戻り、一時小康を得て、文展に《落葉》、《黒き猫》(いずれも永青文庫蔵)といった代表作を送るが、同44年(1911)、37歳で早世した。
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INFORMATION作品情報

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