昭和17年(1942)/絹本着色 軸装
75.0×87.0cm
SUMMARY作品解説
玉堂が奥多摩に疎開する2年前、牛込若宮町の画室時代に描かれたもの。彼の代表作《峰の夕》(個人蔵)を思わせる残雪の尾根と立ちこめる靄を背景として、山間の農家のほのかな春の訪れを精細な情感で捉えている。庭先のほころび始めた梅、芽を出し始めた畑の青菜、のんびりと薪を割る農夫など、何気ない光景に玉堂の温情豊かな感覚が読み取れる。玉堂の風景画の特徴の一つは墨色と彩色とのバランスにあるが、本作でも淡墨で描かれた遠景の尾根に明るい彩色を用いた近景の山村を心地よく対比し、日本特有の湿潤な空気に包まれたのどかな山里の風景をありのままの臨場感で描き出している。玉堂自らが修得した円山四条派と狩野派の技法を見事に融合させた独自の画境を示す秀品である。
ARTIST作家解説
川合玉堂
Kawai Gyokudo1873-1957
愛知に生まれる。14歳で京都に出て望月玉泉に師事。明治23年(1890)、第3回内国勧業博覧会で入選。同年、幸野楳嶺門に移る。同28年(1895)、第4回内国勧業博覧会で《鵜飼》(山種美術館蔵)が3等銅牌を受賞。会場で目にした橋本雅邦の《龍虎図》(静嘉堂文庫蔵)に感銘し、上京を決意。以後、雅邦に師事する。同31年(1898)、雅邦と共に日本美術院創設に参加。第1回文展から第12回展まで審査員を務め、《行く春》(東京国立近代美術館蔵)など力作を出品。私塾・長流画塾では300名を超える塾生の指導にあたった。以後も官展を舞台に活躍。昭和15年(1940)、文化勲章を受章。戦中からは奥多摩に身を移し、四季折々の身近な山村風景を描き続けた。
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