1630年/油彩、カンヴァス
99.0×149.0cm
西洋絵画の400年
会期:2025年04月12日 (SAT)~2025年06月08日 (SUN)
名古屋市美術館(愛知、名古屋市)
SUMMARY作品解説
褐色の前景、緑の中景、そして青いパノラマ的遠景という微妙に変化する淡い色彩の段階的な移行を用いた完璧な空気遠近法と古典的な構図の中に、物語性をほのめかす人物を配したロランのごく初期の風景画。 拡散する光が空間を満たし、深い静寂感の中に見る者を瞑想の世界へと誘う。ローマ近郊の田園地帯(カンパーニャ)の実在する風景をもとに描いたと考えられる本作は、厳密な自然描写による風景と思われるため、詩的で理想的な風景画を人為的に構成したロランらしい表現ではないという見方もできよう。しかし、彼の名高い素描と同様、油彩画においても正確な自然描写はこのように厳然と存在している。ここと同じ場所を描いたものに、ロランとの相互関係が注目されるオランダの画家ブレーンベルフの大型の素描(ルーヴル美術館)があり、この場所が人気のある写生場所であったことは間違いない。また繊細に描かれた群葉、川岸に生い茂っている低木や潅木、さらに人物描写等には彼独自の特徴が見られる。 この画面に表現された人物から推定すると、描かれた物語は古代ギリシア神話に登場する一挿話<アモルとプシュケ>であろう。愛(アモル)が魂(プシュケ)を求める寓話で、物語はこうである。 「美貌の王女プシュケにアモルが恋をし、何も知らない彼女は谷間の宮殿に導かれ、人間の姿をしたアモルと夫婦になる。二人はいつも暗闇の中で会ったので、彼の正体は秘められていたが、ある時つい眠るアモルの姿を見てしまう。アモルは怒り、宮殿は消えて、プシュケは世界を彷徨う・・・。」 前景中央の座っている女性がプシュケで、恋人アモルに見放されて深いもの思いに沈んでいるところを農夫に慰められている場面。周囲を取り囲まれたような印象のあるこの川面の場所は、物語に出てくる幻の宮殿があった谷間を連想させる。
ARTIST作家解説
クロード・ロラン(クロード・ジュレ)
Claude Lorrain (Claude Gellée)1604/05-1682
フランス東部のシャマーニュに生まれる。早くに両親を亡くして孤児となったロランは、若くしてローマへ赴き、後に画家アゴスティーノ・タッシの工房で学び、ローマの地で風景画家となった。同時期にローマで活躍したフランス人画家ニコラ・プッサンとも交友があり、ローマ近郊のカンパーニャにスケッチに出かけたとも伝わる。北方画家の様式からも影響を受け、画面の片側に木々の茂み、片側には空気遠近法を用いて開放的な空間を描く非対称的な構図を取り入れた。また微妙な光の効果を巧みな陰影描写をもって描き出し、彼独自の詩情豊かな風景画を確立した。プッサンとともに歴史画にも取り組んだが、ロランはあくまでも風景に主眼を置くスタンスを貫いた。
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INFORMATION作品情報

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Provenance: Goudstikker Coll., Amsterdam (as Claude) Sale Mak, Amsterdam 28 Jan. 1941 (8, repr. ) (as Claude) Anon. Sale, Christie’s, 20 May 1966 (152) (as Swanevelt) When bt. For the present owner Exhibited: London, Hayward Gallery, Newcastle, Laing Art Gallery, The Art of Claude Lorrain; catalogue by M. Kitson, 1969, no.7 repr. Munic, Haus der Kunst, catalogue by M. Roethlisberger, 1985, no.9 repr. Im licht von Claude Lorrain,
Literature: M. Roethlisberger, “Additions to Claude”, in Burlington Magazine CX, 1968, p.116 M. Roethlisberger, “De Bril à Clade Tableaux inédits”, in Revue de l’Art 5,1969, 50-60, repr. L. Gowing, Nature and the Ideal in the Art of claude, in Art Quarterly 37, 1974, 92,repr. M. Roethlisberger, L’opera Completa di Claude Lorrain, Milan, 1975, no.18, colour plate M. Roethlisberger, Tout l’ œuvre peint de Claude Lorrain, Paris 1977, no.17, colour plate, new edition Paris,1986, no.3, repr. Galleria Gaparrini, Plazzo Rumpoli Rumpoli, Rome, catalogue1986, p.20, colour plate
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