1740年/油彩、カンヴァス
145.0×115.0cm
SUMMARY作品解説
この肖像画は、手に仮装用の仮面を持ち、バラ色のリボンで縁どりされた白いドミノ(頭巾つきのガウン)を着て座っているジョフラン夫人の娘・フェルテ=アンボー侯爵夫人(1715ー1791)を描いたもの。母親のジョフラン夫人(1699ー1777)が「娘が25歳の時にナティエに彼女の肖像画を描いてもらった」と手帳に書きとめている。胸もとには真珠の縁飾りのある白絹製のローブものぞいている。 本作の2年前に同じナティエの手によって描かれた母親ジョフラン夫人の肖像画も東京富士美術館の所蔵であり、これら2点は対をなすような形となっている。 作者ナティエは当時の上流社会の貴婦人たちの人気を集めて、彼女らを神話の女神になぞらえて描く、いわゆる扮装肖像画の形式を流行させた。フランス王室にも迎えられ、ルイ15世の娘たちの御用画家としても活躍したが、後年になって厳正な審美眼に立つディドロから、「紅白粉(べにおしろい)で絵を描いた」と非難されている。しかし本作をはじめ、彼がこの年代に描いた力作には、充実した様式美と繊細な感受性が溢れており、洗練された典型的なロココ趣味で女性を描く肖像画家としてのナティエの才能を見ることができる。
ARTIST作家解説
ジャン=マルク・ナティエ
Jean-Marc Nattier1685-1766
ナティエは上流社会の貴婦人たちの庇護を背景に、彼女らを神話や寓意上の女神になぞらえて描き、いわゆる扮装肖像画の形式を流行させた。フランス王室にも迎えられ、ルイ15世の息女たちの御用画家としても活躍したが、後年になって厳正な審美眼に立つ批評家ドゥニ・ディドロから攻撃を受け、「紅白粉で絵を描いた」と非難された。しかし、彼がこの年代に描いた力作には、充実した様式美と繊細な感受性が溢れており、典雅なロココ趣味で女性を描く肖像画家として開花したナティエの才能を認めることができよう。
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INFORMATION作品情報
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Provenance: Collection de Madame Geoffrin, jusqu’à sa mort en 1777 Collection du modèle, Marie-Thérèse Geoffrin, femme du marquis d’Estampes, jusqu’à sa mort en 1791 Collection Louis Félicité Omer, marquis d’Estampes, jusqu’à sa mort en 1833 Collection Ludovic Omer, marquis d’Estampes, jusqu’à sa mort en 1875 Collection Théodore, comte d’Estampes, jusqu’en 1889 Collection Robert, marquis d’Estampes Collection comtesse de Bruce, née Anne d’Estampes Exhibited: Paris, Jeu de Paume, Cent portraits de Femmes des Ecoles Anglaise et Française du ⅩⅧ’e siècle, 1909, pp.25 et 134 Paris, Musée Carnavalet, Les Grands Salons littéraires, 1927, n°143 「18世紀珠玉のフランス絵画展」、東京富士美術館、1988
Literature: Marquis de Ségur, Le Royaume de la rue Saint-Honoré, Madame Geoffin et sa fille, Paris, 1897, p.493 P. de Nolhac, J.M. Nattier, Peintre de la Cour de Louis ⅩⅤ, Paris, 1905, pp.52, 53 et 141, reprodut p.56 P. de Nolhac, J.M. Nattier, Peintre de la Cour de Louis ⅩⅤ, Paris, 1925, pp.95,253 et 254, reproduit p.192 « Une Eposition au Musée Carnavalet: les Grands Salons littéraires », Le Gaulois Artistique, 21 avril 1927, p.108, reproduit p.111 「18世紀珠玉のフランス絵画展」カタログ、no.20、東京富士美術館、1988
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