島津斉彬所用 白糸裾萌葱紺威鎧 江戸時代後期、19世紀 東京富士美術館蔵
『サムライ・アート展』に出品されている作品をご紹介いたします。
幕末の薩摩藩主・島津斉彬が着用したと伝えられる大鎧。ほぼ制作当初と考えられる状態で各部が揃っているものとして、大変貴重です。兜の鉢は、古く鎌倉時代のものを転用しており、各所に取り付けられた金具の装飾は豪華な造りで、他に類を見ないほど手の込んだものです。
また胴前面の獅子牡丹文様の弦走(つるばしり)の革、籠手の蒔絵に加え、白色、萌黄色、紺色の三段の威絲(おどしいと)など、全体に勇壮さ、重厚さに加えて優雅さ、軽快さの感じられる、上品な作風です。
昭和3年(1928)に開催された公爵島津家蔵品入札目録に目録番号375番として掲載されており、斉彬所用の甲冑として来歴が確かな名品です。