
本日は、東京大学名誉教授 高階秀爾氏の展覧会に寄せられたコメントをご紹介申し上げます。
『時代を表現した多彩な作品群』
イギリス絵画の魅力は、画家の〝現実的な目線〟です。主題と時代が色濃く出ている。それまでの絵画とは一線を画しています。
イギリス文学のように、イギリス絵画にも物語性がある。
例えば、チャールズ・シムズの「クリオと子どもたち」は第1次世界大戦当時の作品です。女神が手にする巻物には、血を象徴する赤が塗られている。
細部に目をやると、一見、見過ごしてしまいそうなところに、何らかの意義を込めている。それが興味深い。
アカデミーで育った人を中心とした展示ですから、出品しているのはハイクラスの画家たち。アカデミーで認めてもらうための大事な作品なので、どれも全力を注いでいる。これが大きな特色です。
ターナーやラファエル前派の展覧会はありましたが、これだけの規模でイギリス絵画を俯瞰したのは初めてでしょう。日本では非常に貴重な展示会です。イギリスのアカデミーでは普段、並べていない作品もあります。
東京富士美術館には何度も来ています。常設展も実に見応えがあります。ラ・トゥールやシャルダンなどが展示されており、アカデミー展と併せて観ることで、絵画の歴史への理解が一層深まるに違いありません。(談)
東京大学名誉教授 高階秀爾氏(美術評論家)
写真キャプション
チャールズ・シムズ
《クリオと子どもたち》
1913年、1915年塗替|油彩・カンヴァス|114.3×182.9cm
© Royal Academy of Arts, London; Photographer: John Hammond