1961年/油彩、カンヴァス
91.5×62.9cm
西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで
会期:2025年01月11日 (SAT)~2025年03月23日 (SUN)
東京富士美術館:新館・常設展示室5
西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで
会期:2025年04月12日 (SAT)~2025年06月22日 (SUN)
東京富士美術館:新館・常設展示室6
SUMMARY作品解説
本作のモデルのルース・ラックマンは、ニューヨークの化粧品会社レブロンの創業者の一人チャールズ・ロバート・ラックマンの妻である(二人は本作が制作された翌年の1962年に離婚している)。赤い半袖の清楚なドレスに控えめなアクセサリーを身につけ、知的で自信に満ちた表情を浮かべるその相貌から、彼女が社会的経験を豊富に積んできた女性であることが窺える。モデルは、近世以降の伝統的な西洋絵画技法である四分の三正面像をとり、極めて写実的に描写されている。ダリは自身の絵画について「パラノイア(偏執症または妄想症)的=批判的」方法と称し、そこにはジョルジョ・デ・キリコを思わせるメランコリーな雰囲気が漂うが、本作の背景にはそうした彼特有の荒涼とした原野が広がり、故郷スペインのアンポルダ地方を思わせる糸杉、遠景には山々が横たわっている。また荒野には羽を生やした人物を追いかけるかのように馬にまたがる人物が小さく配されている。こうした点景人物はダリ作品によく登場するが、特に騎馬の人物描写には、そのルーツにレオナルド・ダ・ヴィンチが《アンギアーリの戦い》のために残した交戦する人物素描があるとの指摘もある。一種の仮想空間ともいえるような背景描写と、リアリティーを意識した写実的な人物描写が融合した、ダリのこうした肖像画は、時に幻視的な要素を盛り込みながら、彼が好んで交友を図った上流階級の人々との幅広い人間関係の中で、1930年代以降多く描かれることとなった。
ARTIST作家解説
サルバドール・ダリ
Salvador Dali1904-1989
スペイン北東部のフィゲラスに生まれる。同地でファン・ヌニェスにデッサンを学び、1921年、マドリードのサン・フェルナンド王立美術アカデミーに入学。同級生にルイス・ブニュエルらがいた。1923年、アカデミーの規律を乱したとして停学となり、後に退学となる。1926年、28年とパリを訪れ、パブロ・ピカソやシュルレアリストたちと交友。1929年夏、ルネ・マグリット、ポール・エリュアールらが訪れ、エリュアールの妻ガラと出会い、その後、結ばれる。同年秋、パリでブニュエルと共同制作した映画「アンダルシアの犬」を上映。11月にはパリのグーマンス画廊で個展を開催し、カタログの序文をアンドレ・ブルトンが手がける。この頃からオブジェ制作も始める。1939年、ニューヨーク万国博覧会のパヴィリオンのデザインを担当。同年、シュルレアリストのグループと袂を分かつ。1940年、ドイツ軍侵攻に伴い、ニューヨークへ渡る。翌年、ニューヨーク近代美術館のホアン・ミロとの二人展が開催され、大いに人気を博す。アメリカでは舞台や宝飾のデザインに加え、文筆活動も盛んに行い、1942年には自伝『サルバドール・ダリの秘められた生涯』を刊行。戦後は日本をはじめ世界各地で大回顧展が催される。1971年にクリーヴランドにダリ美術館が、1974年には故郷フィゲラスにダリ劇場美術館が開館した。
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INFORMATION作品情報
来歴: 1961年、ルース・ラックマンが作家より購入、ニューヨーク 2000年、個人蔵 2022年、東京富士美術館購入
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