寛政2年(1790)/紙本墨画 軸装
155.5×77.3cm
SUMMARY作品解説
象を画面いっぱいに真正面から描く。細長い画面を逆手にとった意表を突く大胆な構図である。象の背景となる部分を全て墨で塗りつぶし、象を着色せず引き立てる手法も効果的で、これは拓版画の効果を肉筆画に応用したものと推測される。単純な作風に見えるが、淡墨と濃墨を細心の配慮を払って用いていることが理解できる。背中を三本の曲線だけで表わすなど抽象化されていて興味深い。その落款と印章から若冲70歳代半ばの作と知れる。享保13年(1728)、第8代将軍徳川吉宗の要請で実際の象が日本に持ち込まれ、その翌年、長崎から江戸まで歩いて移動したという。14歳を迎えた若冲は、おそらく京都の地でその象を実見したとみられる。本作は、実際に見たであろう象の記憶そのままに、畳一畳近くある大型の画牋紙からはみ出るほどの迫力で描かれている。若冲が手がけた「正面書きの象」は、代表作として名高い「樹下鳥獣図屏風」「鳥獣花木図屏風」を合わせて、現在確認できるのは5点のみ。本作はそのうちの稀少な1点である。
ARTIST作家解説
伊藤若冲
Ito Jakuchu1716-1800
京の高倉錦小路の青物問屋の長男に生まれる。名は汝鈞。字は景和。斗米庵、米斗翁とも号した。絵画と禅に傾倒し「若冲」の居士(在家の仏道修行者)号を得たのち、40歳で家業を弟に譲り画業に専念した。最初、狩野派を学び、のちに京都の古寺に伝わる宋、元、明の中国画を模写し、当時流行した沈南蘋の細密な花鳥画や黄檗宗関係の水墨画などの影響を受け、写実と想像を巧みに融合させた画風を完成させた。85歳で没。
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INFORMATION作品情報
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