安永7年(1778)以降/紙本墨画 軸装
101.7×29.2cm
SUMMARY作品解説
太い尾のような苔を従えた亀は蓑亀ともいわれ、吉祥の図案としてよく絵画に用いられた。亀に乗る仙人は中国の仙人についてまとめた『列仙伝』(巻之二)に登場する黄安仙人が知られる。同書には「赤い銅色の身体を露出し、年中衣服を着ることがなかった」とあり、その容姿について挿絵入りで紹介した『繪本故事談』には亀の上に乗り、伸び切った髪と髭を生やした半裸姿の黄安仙人が描かれている。しかし本作に見られる仙人は、服を着込み、長い禿頭が特徴的に描かれ、明らかに七福神の一人である寿老人を思わせる風貌をしている。現に亀に乗る寿老人をモティーフとした絵画や置物なども残っていることから、本作のように別の仙人を七福神に見立てた図案が、蕭白の生きた時代に吉祥図の一つとして流通していたということも考えられる。いずれにしても、やや企み顔の仙人と存在感のある亀の顔つきに蕭白特有の愛嬌があり面白い。また、もう一つ注目すべきは本作に付された印(朱文壺印)である。この印は元々正方形であったが、時代を経て欠損が進み、印影がまるで壺の形のように変化することで知られる。蕭白作品には珍しく「安永七戊戌春」との年記が入った《蘭亭曲水図》(個人蔵)には、本作よりもやや欠損が進む前の状態にある朱文壺印が見られることから、本作は安永7年(1778)以降に描かれたものと推察することができる。
ARTIST作家解説
曾我蕭白
Soga Shohaku1730-1781
京都に生まれる。姓は三浦。はじめ高田敬輔に学び、雲谷派にも影響を受けたとされる。室町期の画家曾我蛇足に私淑し曾我姓を名乗る。20代から30代にかけ伊勢および播州(兵庫県近辺)に数度遊歴する。伊勢では朝田寺、旧永島家など多くの障屛画を手がけた。奇矯なデフォルメ、強烈な色彩やあくの強い奔放な筆法を特徴とし、代表作に《群仙図屏風》がある。晩年は京都に身を置き、絵師としての地位を得た。52歳で没。