昭和10年(1935)/木版多色刷
36.5×24.2cm
江戸から近代へ─東京富士美術館浮世絵所蔵展
会期:2025年03月29日 (SAT)~2025年05月25日 (SUN)
創価美術館(台湾、高雄)
SUMMARY作品解説
風景版画での名声が確立するにつれ、巴水は歌川広重と比較されるようになり、「広重の再来」「昭和の広重」などと称されるようになる。ただ巴水自身は、それを必ずしも名誉とは考えておらず、むしろ広重との違いを主張していた。やがて巴水は、広重の「東海道五拾三次」を意識するように、昭和6年(1931)「東海道風景選集」シリーズに着手する。広重が東海道の賑やかな宿場町を描いたのに対し、巴水は東海道を独自の視点で捉え直し、心地よさを与えてくれる場所を選んで描き出したのである。 半田は愛知県南部、知多半島の東岸に位置する。知多湾に面する天然の良港として、江戸時代から海運業で栄え、酒や酢、醤油などの醸造業も盛んであった。そのため街中を通る運河沿いには、黒板囲いの蔵が建ち並んでいた。 しんしんと雪が降る運河沿いの道を、傘を差した人物が犬を連れて歩いている。白を基調とした雪景色の中に、人物と犬の黒いシルエットが浮かび上がり、印象的な画面となっている。
ARTIST作家解説
川瀬巴水
Kawase Hasui1883-1957
東京に生まれ、同地で没する。本名は文治郎。白馬会洋画研究所で洋画を学び、岡田三郎助に指導を受ける。明治43年(1910)鏑木清方に入門。同門の伊東深水『近江八景』に触発され、大正3年(1914)から新版画の制作に手をそめる。同年渡邊版画店から「塩原おかね路」など版画3点を出版。同9年(1920)の『旅みやげ第1集』で版画家としての地位を確立する。「東京十二題」(大正8年)、「日本風景選集」(昭和元年)など、一貫して風景版画に取り組み続け、旅情・叙情溢れる新境地を開拓した。昭和28年(1953)には文化財保護委員会により、「増上寺の雪」の制作過程が記録された。
同じ作家の作品一覧
INFORMATION作品情報

EXPLORE作品をもっと楽しむ

全国の美術館・博物館・アーカイブ機関を横断したプラットフォームでコンテンツを検索・閲覧でき、マイギャラリー(オンライン展覧会)の作成などができます。