SUMMARY作品解説
レリーは国王の肖像画を多く手がけたが、生涯にわたって描き続けたのはジェームズ2世と最初の妻、アン・ハイドであった。レリーがジェームズの肖像画を描くようになったのは、アンの父であるクラレンドン伯爵が1660年のジェームズとアンの結婚を記念して制作を依頼したのが始まりである(スコットランドポートレートギャラリー蔵)。1666年には、ジェームズはローストフトの海戦で彼に仕えた海軍将官の肖像のシリーズをレリーに発注した。また、ジェームズはレリーの死後、ジェームズを描いたレリーによる未完の肖像画3点をレリーの工房から直接入手したとも考えられている。 この肖像では、レリーはジェームズの優美さと威厳を保たせながら、彼の穏やかで凛とした表情を捉えている。
ARTIST作家解説
ピーター・レリー
Peter Lely1618-1680
オランダ人の両親のもとドイツで生まれる。レリー(Lely)の呼び名は実家の切妻にユリの花(Lily)が彫られていたことに由来する。本名はピーター・ファン・デル・ファース。アンソニー・ヴァン・ダイクを引き継ぐ肖像画家として17世紀半ばのロンドンで人気を博した。ハールレムで絵を学び、ヴァン・ダイク亡き後の1643年頃にイングランドに移住したと考えられている。初期には風景画や宗教画、歴史画を描いていたが、次第にヴァン・ダイクの様式を踏襲するような肖像画の制作に取り掛かるようになり、王やパトロンの肖像画家として名声を博した。レリーは自身の類まれなるデッサン力を用いながら、ヴァン・ダイク作品の特徴である躍動的な絵具のタッチと、オランダ絵画に見られる豊かな色彩や光の明暗の表現、空想的な風景の要素を組み合わせた。イングランド王政復古後の1661年には主席宮廷画家の任命を受けた。急速に増えた大量の絵画注文の需要に応えるため、レリーは1670年代初期頃からは大規模な工房を経営した。肖像画の注文に対しては、数多くの既存のポーズから選び、頭部は実際の被写体をモデルにしながらレリー自身が絵具で彩色し、チョークで輪郭を描き、残りの作業は弟子に委ねるなどして、効率的な工房経営を実現させたのである。レリーは優れた美術収集家でもあった。ロンドンに到着した時から芸術作品を買い求め、16-17世紀のオランダやイタリア、フランドルの充実したコレクションを築き上げていった。イングランドにおいて、コレクターの刻印がつけられたのはレリーのコレクションが初めてであった。
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INFORMATION作品情報
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