1629年／油彩、カンヴァス
114.3×95.9cm
西洋絵画の400年
会期：2024年07月26日 （FRI）～2024年09月23日 （MON）
静岡市美術館（静岡、静岡市）
SUMMARY作品解説
フランドルの出身で、16歳のときには工房を構え弟子をもっていたと伝えられるヴァン・ダイクは、若くして華やかな活動を展開し、21歳で英国ジェームス1世の宮廷画家となった。22歳からの6年間はイタリアで過ごし、ヴェネツィア派とりわけティツィアーノの作風を吸収しつつ、貴族の肖像画を数多く手がけ大成功を収めた。そして確固たる名声と実力とともに、28歳で故郷アントウェルペンに戻る。以後、再び英国に渡るまでの5年間は、肖像画の注文が絶えることなく多忙を極めたが、その間オランダに2度赴き、そこでオランダ総督オラニエ公フレデリック・ヘンドリックとその妻アマリア・フォン・ソルムスの肖像画を数点描いた。 本作はそのうちの最も出来映えの良い作品で、滑るような白い肌をもつ貴婦人のからだが、高雅な黒のドレスに包まれ、茶系色の錦織の掛け物を背景にしてシックな色調の中に凜然と輝きを放っている。ここに描かれた女性の夫フレデリック・ヘンドリック（1584ー1647）は、1625年から没年までオランダの総督を務めたオラニエ＝ナッサウ家の公爵で、現オランダ王室の遠い源流に位置する人物である。 この夫妻の肖像を描いた対作品は2組あり、本作はもとオラニエ＝ナッサウ家に伝わる完成度の高い方の組の妻の絵で、これと対をなす夫の肖像画は現在アメリカのバルティモア美術館に収蔵されている。またもう1組はマドリードのプラド美術館の所蔵となっている。 この絵についてはエリック・ラールセンがカタログ・レゾネの中で次のように評価を下している。「妻の肖像の出来映えは、夫のそれより上質と思われる。どちらも間違いなくオリジナル作品である。この夫人の肖像画は、念入りに技法を駆使した素晴しい仕上がりである」（『ヴァン・ダイク』）
ARTIST作家解説
アントニー・ヴァン・ダイク
Anthony van Dyck1599-1641
フランドル出身の17世紀最大の画家の一人。アントウェルペンで生まれる。ペーテル・パウル・ルーベンスの工房で制作しながら、ルーベンスのもつ優雅で宮廷的な画風の一面を受け継ぎ、神話画、宗教画、ことに肖像画にその天才的才能を発揮した。16歳のときには工房を構え弟子をもっていたと伝えられ、若くして華やかな活動を展開し、21歳でイギリスのジェームス1世の宮廷画家となった。22歳からの6年間はイタリアで過ごし、ヴェネツィア派とりわけティツィアーノ・ヴェチェッリオの作風を吸収しつつ、貴族の肖像画を数多く手がけ大成功を収めた。後年、チャールズ1世の宮廷画家として没年までイギリスで過ごし、騎士の称号を受けた。代表作に《チャールズ1世の肖像》（ルーヴル美術館蔵）などがある。
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Provenance: Princess Amakia von Solms, The Hauge, and inherited by her daughter Princess Henrietta Catherina, 1675, wife of Johann Georg, Princess of Anhalt-Dessau Passed by bequest to Johanna Charlotte, Markgrafin of Bandenburg-Schwedt, 1750, and passed to her sister The Duchess Maria Elanora von Radziwill, 1756 Inherited by the Duchess’s nephew, Leopold Frederich Frans of Anhalt-Dessau, Ducal Palace, Worlitz The Norton Simon Foundation, Los Angeles Exhibited: Hartford, Wadsworth Atheneum, 1930, no.51 Toronto, Art Gallery, Paintings of Women from the ⅩⅤ to the ⅩⅩ Century , 1938, no.21 Houston, Museum of Fine Art, Seventeenth Masters of Paintings, 1950, no.15 reproduced Minneapolis, Institute of Arts, Great Paintings by Famous Painters,1952, no.9 New York, Duveen. Rubens and van Dyck,1959 On loan, Los Angeles County Museum of Art, 1964-66 On loan, Metropolitan Museum of Art, August 1966
Literature: Ms Inventory of paintings in Estate of Princess Amalia, 1675 (State Archives, Brussels) Ms Inventory of the Estate of Henrietta Catherina, Princess of Anhalt, 1709 (Anhalt-Dessau State Archives, folio C., p.119, no.52) J. Guiffrey, Anthonie van Dyck ,1882, pp.130-131(refers to Princess Amalia’s inventory) F.J. van den Branden, Geschiedenis der Antwerpsche Schilder-kunst,1883, p.713 L. Cust, Anthony van Dyck, 1900, p.82 G. Gluck, Klassiler der Kunst, Van Dyck,1931, p.556, pp.336-337, note Manquoy-Hendrick, 1956, no.152 Eric Larsen, The Paintings of Anthony van Dyck, published Luca Verlag Freren 1988, catalogue no.557, p.225
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