南宋(13世紀)/
高11.8cm、口径13.6cm、胴径14.4cm
SUMMARY作品解説
中国の古銅器「鬲(れき)」を模した、張り出した腰から足が伸びる形が、袴を着けたように見えることから、日本では「袴腰」と呼ばれる。薄い胎土に釉薬を厚く掛けることで清澄な釉色となるのが、南宋時代の龍泉窯青磁の特徴。同様の青磁釉をまとう花入の形が、布を打つ砧(きぬた)の槌(つち)に似ていることなどから、この釉色の青磁は日本で「砧(碪)青磁」と呼ばれ珍重された。これを納める江戸期を下らない木箱の蓋表にも「碪香爐」の墨書がある。
ARTIST作家解説
龍泉窯
Long-quan Ware
唐時代から清時代の窯。窯跡は、浙江省麗水市龍泉市を中心に広く分布。唐時代から、青磁のほか黒釉も生産。青磁の本格的な生産は北宋時代に始まり、灰色がかった淡い色の釉調、淡青釉が特徴で、実用器のほか多嘴壺などの明器が作られた。北宋時代後期には緑青色の釉色が多くなり、南宋時代には明るい青色、粉青色の青磁(砧青磁)が出現する。元時代には、酒会壺や盤などの大型品も作られるようになり、貼花文や刻花文などの器面装飾が多用され、青緑色の青磁(天龍寺青磁)が主流となる。明時代前期には碧緑色の上質な青磁(七官青磁)も生産されたが、中国陶磁の主流は青磁から景徳鎮窯の青花磁器や五彩磁器に移っていく。また、北宋時代末期以降、海外に広く輸出され、わが国にも多数請来されている。日本に向けて出航し1323年頃に沈没した、韓国の新安沖沈船から引き揚げられた約22,000点の陶磁器のうち、龍泉窯青磁は約80%を占める。