1900年/油彩、カンヴァス
65.4×81.0cm
西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで
会期:2024年07月06日 (SAT)~2024年09月29日 (SUN)
東京富士美術館:新館・常設展示室2〜5
SUMMARY作品解説
晩年のピサロの制作拠点となったのは、1884年から移り住んでいたエラニー=シュル=エプトの家で、彼は林檎の果樹園に続く庭の納屋を改造したアトリエで、1903年の死の年まで制作を続けた。エラニーはパリの北西郊外約70kmのところに位置し、傍を流れるエプト川を下流に約30kmほど下ると、モネが1883年以来住んで睡蓮を描いていたジヴェルニーがある。 ピサロはエラニーの家を生活の中心に据えながらも、都会のパリにもたびたび足を運び、田園の生活と都市の生活を描き分けた。この頃の彼は、デュラン=リュエル画廊との専属契約によって定期的な個展の開催が約束されていたし、また年齢の上でも、経済的な面でも、そして技術の点においても、安定した環境と要因に恵まれていたといえる。 1900年のピサロは、前年から引き続き4月までパリで制作をして、春から初夏にかけての5〜6月にエラニーの自宅に戻って制作。夏の7〜9月にはノルマンディー海岸の避暑地ベルヌヴァルを訪れ、秋の10〜11月に再びエラニーに戻っている。 この年、エラニーで描かれた風景は春の絵が5点、秋の絵が4点あるが、この中の春と秋の1点ずつが東京富士美術館に所蔵されている。 前述のように、本作が描かれた1900年の春(5〜6月)は、エラニーの果樹園のアトリエで萌え出ずる春盛りの田園風景の制作にいそしんだ。ピサロは5月7日付の手紙の中で、エラニーの樹木の開花についての情熱的な心情を吐露している。この絵でピサロはエラニーの花咲く桃源郷を爽やかに屈託なく表現した。春のいくぶん湿気を含んだ新緑の鮮やかさや満開の林檎の花のほのぼのとした美しさを、春特有の花曇りの日差しの中に捉えようとしたのであろう。このようにピサロは、移り変わる自然の一瞬のヴィジョンをカンヴァスの上に連作として描きとどめた。同じ頃モネが、光によって変幻する色彩それ自体の変化に興味の主たる対象があったのに対して、ピサロは同じ場所のなかで視点を移動し、変化させることによって風景をさまざまな角度から切り取り、春夏秋冬の四季の変化、朝、昼、夕の一日の変化、晴れ、曇り、雨、雪の気象の変化を自在にあやつりながら、そのヴァラエティーを楽しんだのだった。
ARTIST作家解説
カミーユ・ピサロ
Camille Pissarro1830-1903
カリブ海のセント・トーマス島に生まれる。25歳の時パリに赴き、本格的な絵画の勉強を始める。クールベ、コローらの作品に感銘し、写実主義や外光主義の時代を経て、モネと知り合い、印象派の画家となった。普仏戦争中、ロンドンでのターナーやコンスタブルの作品との出会いは、彼に風景画家としての道を決意させた。ポントワーズやエラニーにおける穏やかな田舎の風景画は、ピサロ絵画の代名詞ともいえる。印象派の画家たちの中では最も年長で、セザンヌやゴーギャンに印象主義を教える役割を果たした。
同じ作家の作品一覧
INFORMATION作品情報
2023年7月28日 (金)~8月27日 (日)
東西近代絵画名品展 石川県立美術館(石川、金沢市)
2019年1月12日 (土)~5月4日 (土)
西方絵画500年 上海宝龍美術館(中国、上海)
2018年10月23日 (火)~12月23日 (日)
西方絵画500年 清華大学芸術博物館(中国、北京)
2015年10月8日 (木)~2月21日 (日)
日本が愛した印象派─モネからルノワールへ ドイツ連邦共和国美術展示館(ドイツ、ボン)
2014年9月13日 (土)~11月3日 (月)
おいしいアート 食と美術の出会い 横須賀美術館(神奈川、横須賀市)
2014年3月11日 (火)~5月11日 (日)
光の賛歌 印象派展 ─パリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅 京都文化博物館(京都、京都市)
2014年1月15日 (水)~3月2日 (日)
光の賛歌 印象派展 ─パリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅 福岡市博物館(福岡、福岡市)
2012年6月6日 (水)~8月19日 (日)
カミーユ・ピサロと印象派 永遠の近代 兵庫県立美術館(兵庫、神戸市)
2007年7月14日 (土)~11月25日 (日)
印象派とその源流展 モネ、ルノワールとバルビゾン派の巨匠たち──東京富士美術館コレクション メルシャン軽井沢美術館(長野、北佐久郡御代田町)
2003年8月1日 (金)~8月31日 (日)
印象派と近代絵画の巨匠たち展〜バルビゾン派からポップアートまで〜 岩手県民会館・展示室(岩手、盛岡市)
2003年4月18日 (金)~5月25日 (日)
美の巨匠たち 西洋絵画〜400年〜 福岡市美術館(福岡、福岡市)
2003年1月2日 (木)~1月26日 (日)
近代洋画の巨匠たち 佐賀県立美術館(佐賀、佐賀市)
2002年10月12日 (土)~11月10日 (日)
西洋名画への招待展 バルビゾンからモダーンまで 網走市立美術館(北海道、網走市)
2002年9月7日 (土)~9月29日 (日)
東京富士美術館の名品 西洋絵画の400年 そごう美術館[横浜駅東口/そごう横浜店6階](神奈川、横浜市)
2002年7月20日 (土)~8月31日 (土)
夏休み・親子で学ぶ東西の名画展 富士美術館(静岡、富士宮市)
2002年6月7日 (金)~6月23日 (日)
近代絵画の巨匠たち〜バルビゾン派からポップアートまで〜 福井市美術館(福井、福井市)
2002年5月11日 (土)~6月2日 (日)
近代絵画の巨匠たち〜バルビゾン派からポップアートまで〜 鹿児島県歴史資料センター黎明館[第1特別展示室](鹿児島、鹿児島市)
2002年4月13日 (土)~5月6日 (月)
近代絵画の巨匠たち〜バルビゾン派からポップアートまで〜 浦添市美術館(沖縄、浦添市)
2000年10月1日 (日)~12月3日 (日)
西洋名画展—ルネサンスから20世紀 国父記念館(台湾、台北)
1995年6月24日 (土)~9月3日 (日)
フランス印象派展—光と色彩の交響曲 サンティジャーナ財団本部、ドン・ボルハの塔(スペイン、サンティジャーナ)
1990年11月3日 (土)~12月2日 (日)
西洋絵画名品展 湖巖美術館(韓国、京畿道龍仁郡)
1990年9月22日 (土)~10月21日 (日)
西洋絵画名品展 中央日報・湖巖ギャラリー(韓国、ソウル)
Provenance: Paul Rosenberg, Paris Evan Charteris, London Acquabella Galleries,Inc New Exhibited: Paris, Galerie Manzi et Joyant, Rétrospective de Camille Pissarro, Jan-feb., 1914, no.30 London, The Tate Gallery, June-Oct., 1931, no.11 London, The Burligton House, Exposition d’Art Français, Jan.-March, 1932, no.531
Literature: L.R.. Pissarro and L.Venturi, Camille Pissarro, son art/son œuvre, Paris, 1939, p.239, no.1140 (illustrated, pl.226)