1900年/油彩、カンヴァス
65.0×81.0cm
SUMMARY作品解説
この作品は、画商のデュラン=リュエルが1900年11月22日に画家から入手し、翌年1月にパリの画廊で行われたピサロの個展に展示された。その後、1913年にニューヨークのデュラン=リュエル画廊での展覧会に出品されている。 ピサロは四季の変化とともに異なった様相を見せる果樹園の景色をテーマに、エラニー風景の連作を試みている。クリストファー・ロイドは、こうした画家の試みについて次のように説明している。「ジヴェルニーにおけるモネのように、ピサロを取り囲む田舎の光景に対する彼の考察は強烈だった。彼は変化していく風景のつかの間の状態を楽しんだ。そして冬の霧、霜、雪、あるいは夏の活気ある暑気やみずみずしく繁った緑が、それぞれ同じように価値があることを発見した。ピサロはまた、対象への視線の位置をたえず移動しながら、変化する季節、一日の区分による視覚的多様性を連作として描くことを始めたのである。」 ピサロは死を迎える前、自身の絵画制作の方法を次のように定義した。「作品を手がけるとき、初めに決定することは調和である。この空と、この大地と、この水のあいだには、必然的に何らかの関係がある。それは調和の関係でしかない」本作に見るように終生かわらぬ「田園画家」であったピサロ最晩年のエラニー風景は、この調和の原則のもとに描かれている。 この絵でピサロは《春・・・》とは違った方角に眼を向けており、画面中央には農家の赤煉瓦の屋根や煙突も見えている。しかし草地の気ままな斑点状のタッチや木の葉の細かい筆触、空の大らかな筆致などにみるように、描き方は変わっていない。大きく変わっているのは色彩で、《春・・・》の若々しい黄緑色の大地、花をつけた浅い緑色の木の葉、青く澄んだ空と比べて、《秋・・・》の方は枯れ葉色に染まる大地、緑濃い木の葉、どんよりとした冷たいグレーの空といった具合で、いくぶん乾燥した秋特有の色相を呈している。
ARTIST作家解説
カミーユ・ピサロ
Camille Pissarro1830-1903
カリブ海のセント・トーマス島に生まれる。25歳の時パリに赴き、本格的な絵画の勉強を始める。クールベ、コローらの作品に感銘し、写実主義や外光主義の時代を経て、モネと知り合い、印象派の画家となった。普仏戦争中、ロンドンでのターナーやコンスタブルの作品との出会いは、彼に風景画家としての道を決意させた。ポントワーズやエラニーにおける穏やかな田舎の風景画は、ピサロ絵画の代名詞ともいえる。印象派の画家たちの中では最も年長で、セザンヌやゴーギャンに印象主義を教える役割を果たした。
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INFORMATION作品情報
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Provenance: Galerie Durand-Ruel, Paris (acquired from the artist Novem-ber 22,1900) Acquavella Galleries, Inc, New York Acquired from the above Februry 14, 1964 Exhibited: Paris, Galerie Durand-Ruel, C. Pissarro, 1901, no.35 New York, Drand-Ruel Galleries, Pissarro, 1913
Literature: Ludovic Rodo Pissarro and Lionelle Venturi, Camille Pissarro, son art-son œuvre, Paris, 1939, vol.Ⅰ, p.241, no.1153; vol.Ⅱ, pl.228, no.1153