1773-76年/油彩、カンヴァス
54.0×64.8cm
西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで
会期:2025年01月11日 (SAT)~2025年03月23日 (SUN)
東京富士美術館:新館・常設展示室2
西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで
会期:2025年04月12日 (SAT)~2025年06月22日 (SUN)
東京富士美術館:新館・常設展示室3
SUMMARY作品解説
一般的に「幸せな大家族」「子だくさんの幸せ」というタイトルで知られているこの楕円形の絵は、同じ絵柄のヴァージョンが本作の他に4点(ワシントン・ナショナルギャラリー所蔵ほか)知られており、当時人気を集めた主題である。 画面の中央に白いブラウス、赤いスカートの若い母親が幼子を抱いて坐り、その周りで年長の子どもたちが遊ぶ。左手の窓の外では父親がロバと一緒に家の中をのぞいている。母親の背後には、召使いの女とその子であろうか、シルエットのように寄り添って描かれている。家畜の犬とロバもまるで家族のようで、人物は自由なポーズと視線をとりながら、親しげな感じで互いに深く結びついている様子が見て取れる。しかし、部屋の上方をみると、古代イタリアの廃墟のようであり、この家族の団欒とはおよそ不釣り合いな、古くて大きな石造りの空間である。右手の台(羊の頭と花絆を象った飾りが施されているので古い祭壇であろうか。とすれば、この建物は神殿である)の上には玉葱と肉の塊が置かれ、金属製の深鍋のような容器も見える。 質素な生活だが子宝に恵まれて幸せな家族───。幻想的な建築物を背景に描かれた若い両親と子どもたち───。この絵には、さらに目には見えないいくつかの事実が隠されている。ひとつは、この家族像は18世紀フランスで活躍した思想家ルソーの「家庭は社会の基本であり、家族愛は道徳の根本」という思想を絵に描いた「理想の家族像」であるということ。もうひとつは、フラゴナール自身が幸福な家庭生活に恵まれ、当時流行した官能的なロココ風の絵のみならず、こうした素朴な絵にも才能を発揮することができたこと。そして更にもうひとつ、この絵は、「聖母子像」「聖家族」「羊飼いの礼拝」といった伝統的なキリスト教絵画のテーマを、当時の人物、当世風の主題にリメイクした作品である、ということである。これはフラゴナールが単に風俗画家なのではなく、宗教画家としても優れた知識と技術を持っていたことの証明でもある。赤と青の着衣に身を包み、幼子を抱く若い女性像は、伝統的に聖母マリアと幼児キリストを表わすもので、「絵画の伝統を継承しつつ、自由で新しい18世紀の精神をも体現する」フラゴナールらしい作品といえよう。
ARTIST作家解説
ジャン=オノレ・フラゴナール
Jean-Honoré Fragonard1732-1806
18世紀フランスを代表する画家。バロックの装飾趣味とロココの享楽主義を集大成した画家として有名。ローマ賞受賞ののち、1756年ローマに留学。ここでバロック芸術を学んだ。帰国後、王立アカデミーの会員となる。装飾家、版画家、挿絵画家としても活躍し、ワトーなきあとのフランス画壇の代表的存在として名声を博した。彼の芸術は女性を讃美した18世紀フランス絵画を最も特徴づけるものであり、感覚的で繊細な風俗画を数多く残した。
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INFORMATION作品情報
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Provenance: Ou collection Servat en 1777 (Delaunay grava le tableau Servat en 1777) Ou vente Du Barry, Radix de Saintte Foy, Paris, 17 février 1777, no. 55 Collection Pâris Collection Charpentier, vers 1800 Exhibited: Caracas, Museo de Bellas Atres, Cinco siglos de arte francés, 1977, no.20, reproduit Tokyo, Musée National d’Art occidental, Fragonard, no.56, reproduit en couleur. Exposé également à Kyoto, Musée Municipal, 1980 Paris, Grand Palais, Fragonard, 1987-1988 (catalogue de P. Rosenberg), no.222, reproduit en couleur 「18世紀珠玉のフランス絵画展」、東京富士美術館、1988
Literature: R. Portalis, Honoré Fragonard, Paris, 1899, p.280 V. Josz, Fragonard du ⅩⅧe siècle, Paris, 1901, pp.141 P.de Nolhac, J.H. Fragonard, Paris, 1906, p.130 E. et J. de Goncourt, L’Art du ⅩⅧe siècle, Ⅲ, Paris, 1914, pp.331, 333 D. Wildenestein et G. Mndel, L’Opera completa di Fragonard, Milan,1972, p.103, no.392, reproduit pl. ⅩⅩⅩⅦ (couleur), pl. ⅩⅩⅩⅧ (détail couleur), p.103, fig.392 T. Burollet, Musée Cognacq-Jay. peintures et dessins, Paris, 1980, pp.241-242, cité sous le no.132 J.S. Hallam, « The Two Manners of Louis-Léopold Boilly and French Painting in Transition », Art Bulletin, LⅩⅢ, no.4, décembre 1981, p.619, reproduit fig.2é T.P.F Hoving « The Best of the Best », Connoisseur, CCⅫ, no.850, décembre 1982, p.90, reproduit en couleur, pp.90-91 et en couverture (détail) J.P. Cuzin, Jean-Honoré Fragonard, Vie et œuvre, Fribourg-Paris, 1987, p.319,no312, illustré no.321 Notre tableau figurera dans l’ édition révisée de G. Wilden stein, Fragonard, sous le no.367 bis (à praître) 「18世紀珠玉のフランス絵画展」カタログ、no.8、東京富士美術館、1988
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作品詳細の音声ガイドは、すべて東京富士美術館の公式ナビゲーターである、本名陽子さんに勤めていただいております。本名さんは声優、女優、歌手として幅広く活躍されています。