牧草地の牛、ルーヴシエンヌ | アルフレッド・シスレー | 作品詳細
牧草地の牛、ルーヴシエンヌ
Cows in Pasture, Louveciennes
- 1874年
- 油彩、カンヴァス
- 60.0×73.0cm
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ルーヴシエンヌはパリの西郊約25キロの静かな村で、以前はのどかな風景が広がり、風景画を描くには絶好の場所であったが、現在はパリへ通勤をする人たちのベッドタウンに変わりつつあるようだ。
印象派の画家たちは、1874年の第1回印象派展が始まる前の数年間、この地によく画架を立てて制作をした。おそらく最も早くここを訪れた印象派の画家はピサロで、1868年秋にポントワーズからルーヴシエンヌに移り、普仏戦争が始まる1870年までと、その後の1871〜72年の間ここに住んだ。ルノワールは母親が1868年にこの近くに越してきたので、その後の数年間ここで過ごしたことがある。1869年、モネは愛人カミーユと息子を連れてブージヴァルに移り、この地域で制作をした。ルノワールとモネが一緒に「ラ・グルヌイエール」で描くのは、この年の初秋のことであろう。しかし、ルーヴシエンヌに最も結びつきが深い画家というとシスレーである。シスレーは1869年の冬に彼らを訪問し、翌70年の夏頃にルーヴシエンヌに移り住んだ。それから1875年にマルリー=ル=ロワに転居するまで、1870年代の前半をこの地で過ごし、制作を行った。
この時期のルーヴシエンヌ風景は柔らかな印象主義的手法で描かれ、緑豊かで起伏と変化に富んだこの土地の印象を穏やかなタッチで捉えている。またルーヴシエンヌを離れた後もしばしば訪れ、季節感にあふれる作品を残している。
本作に描かれた場所は、ヴェルサイユ街道からマルリー=ル=ロワの「水場」の方向に降りてゆく道か、あるいは逆にマルリー=ル=ロワの丘の方からルーヴシエンヌの方向を望んだ眺めか、定かではないが、画面左側から右側の方向へゆるやかな傾斜面になっているようにも見える。右手にカーブする道の曲線は、この画面に重要な要素を与えており、近景に広がる牧草地で草を食む牛が三頭、画面の中心を形づくっている。その傍らの画面左手には大木が聳え、一人の女性が幹に寄りかかっている。ここには、シスレーの初期の作品に見られる特徴──樹木の葉、夏空と雲、空間の広がり、曲がり道、光と影など──が勢いよく表現されており、ヴァルール(画面の各部間の色彩の色相、明度、彩度の相関関係)の均整のとれた美しさを見ることができる。本作は1874年4月の第1回印象派展に出品された5点の風景画のうちの1点であった可能性がある。
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ARTIST
アルフレッド・シスレー
Alfred Sisley(1839-1899)
フランスで活躍したイギリス人画家。パリでイギリス人の両親のもとに生まれた。エコール・デ・ボザールや歴史画家シャルル・グレールのアトリエで学ぶ。グレールのアトリエでモネ、ルノワールと出会い、印象主義へと向かう。ピサロと同様ほとんど風景画のみに専念し、生涯パリ周辺の風景を描き続けた。印象主義の運動に積極的に加わったが、仲間や一部の画商を除いては彼を評価するものは少なく、長い病の後にモレ=シュル=ロワンで亡くなった。
展示期間:
2023年9月16日 (土)
~12月10日 (日)
展覧会名:
西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで
展示室:
常設展示室3
出品歴
- 2023年7月28日 (金)~8月27日 (日)
東西近代絵画名品展 石川県立美術館(石川、金沢市) - 2022年9月17日 (土)~11月20日 (日)
西洋絵画400年の旅―珠玉の東京富士美術館コレクション展― 富山県美術館(富山、富山市) - 2022年7月16日 (土)~9月4日 (日)
美の旅 西洋美術400年 ー珠玉の東京富士美術館コレクション 熊本県立美術館(熊本、熊本市) - 2022年3月19日 (土)~5月8日 (日)
ヨーロッパ絵画 美の400年―珠玉の東京富士美術館コレクション― 佐賀県立美術館(佐賀、佐賀市) - 2021年10月23日 (土)~12月26日 (日)
名画でたどる西洋絵画400年-珠玉の東京富士美術館コレクション 栃木県立美術館(栃木、宇都宮市) - 2021年7月9日 (金)~8月29日 (日)
ヨーロッパ絵画400年の旅 珠玉の東京富士美術館コレクション 岡山県立美術館(岡山、岡山市) - 2020年12月15日 (火)~2021年1月31日 (日)
名画を読み解く —珠玉の東京富士美術館コレクション— 沖縄県立博物館・美術館(沖縄、那覇市) - 2020年9月12日 (土)~11月3日 (火)
美の旅 西洋絵画400年 —珠玉の東京富士美術館コレクション展— 宮崎県立美術館(宮崎、宮崎市) - 2020年7月22日 (水)~9月6日 (日)
西洋絵画400年の旅 —珠玉の東京富士美術館コレクション 大分県立美術館(大分、大分市) - 2020年2月20日 (木)~4月12日 (日)
名画を読み解く —珠玉の東京富士美術館コレクション 茨城県近代美術館(茨城、水戸市) - 2019年9月3日 (火)~10月22日 (火)
ヨーロッパ絵画 美の400年 —珠玉の東京富士美術館コレクション— 山口県立美術館(山口、山口市) - 2019年1月12日 (土)~5月4日 (土)
西方絵画500年 上海宝龍美術館(中国、上海) - 2018年10月23日 (火)~12月23日 (日)
西方絵画500年 清華大学芸術博物館(中国、北京) - 2016年7月9日 (土)~8月28日 (日)
巨匠たちの競演 西洋絵画の300年〜ヴァン・ダイク、ドラクロワ、モネ、シャガール 長野県信濃美術館(長野、長野市) - 2016年1月9日 (土)~2月7日 (日)
浮世絵ジャポニズム ─日本と西洋を繋いだ浮世絵─ 菱川師宣記念館(千葉、安房郡鋸南町) - 2015年9月20日 (日)~11月15日 (日)
アルフレッド・シスレー展─印象派、空と水辺の風景画家─ 練馬区立美術館(東京、練馬区) - 2015年6月27日 (土)~8月30日 (日)
美の饗宴 西洋絵画の300年―バロック、ロココからエコール・ド・パリまで 八幡浜市民ギャラリー(愛媛、八幡浜市) - 2015年4月29日 (水)~6月21日 (日)
美の饗宴 西洋絵画の300年―バロック、ロココからエコール・ド・パリまで 徳島県立近代美術館(徳島、徳島市) - 2014年3月11日 (火)~5月11日 (日)
光の賛歌 印象派展 ─パリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅 京都文化博物館(京都、京都市) - 2014年1月15日 (水)~3月2日 (日)
光の賛歌 印象派展 ─パリ、セーヌ、ノルマンディの水辺をたどる旅 福岡市博物館(福岡、福岡市) - 2008年12月23日 (火)~2009年2月8日 (日)
モネ「印象 日の出」展 名古屋市美術館(愛知、名古屋市) - 2007年7月14日 (土)~11月25日 (日)
印象派とその源流展 モネ、ルノワールとバルビゾン派の巨匠たち──東京富士美術館コレクション メルシャン軽井沢美術館(長野、北佐久郡御代田町) - 2003年4月18日 (金)~5月25日 (日)
美の巨匠たち 西洋絵画〜400年〜 福岡市美術館(福岡、福岡市) - 2002年10月12日 (土)~11月24日 (日)
モネからセザンヌへ ─印象派とその時代 埼玉県立近代美術館(埼玉、さいたま市) - 2002年9月7日 (土)~10月6日 (日)
モネからセザンヌへ ─印象派とその時代 秋田県立近代美術館(秋田、横手市) - 2002年6月7日 (金)~6月23日 (日)
近代絵画の巨匠たち〜バルビゾン派からポップアートまで〜 福井市美術館(福井、福井市) - 2002年5月11日 (土)~6月2日 (日)
近代絵画の巨匠たち〜バルビゾン派からポップアートまで〜 鹿児島県歴史資料センター黎明館[第1特別展示室](鹿児島、鹿児島市) - 2002年4月13日 (土)~5月6日 (月)
近代絵画の巨匠たち〜バルビゾン派からポップアートまで〜 浦添市美術館(沖縄、浦添市) - 2000年10月1日 (日)~12月3日 (日)
西洋名画展—ルネサンスから20世紀 国父記念館(台湾、台北) - 2000年3月2日 (木)~4月17日 (月)
シスレー展:印象派の巨匠が愛したフランスの大地 伊勢丹美術館(東京、新宿区) - 1995年6月24日 (土)~9月3日 (日)
フランス印象派展—光と色彩の交響曲 サンティジャーナ財団本部、ドン・ボルハの塔(スペイン、サンティジャーナ) - 1994年9月20日 (火)~11月27日 (日)
1874年─パリ [第1回印象派展]とその時代 国立西洋美術館(東京、台東区) - 1994年3月3日 (木)~3月31日 (木)
近代絵画にみる西洋と日本 東京都庭園美術館(東京、港区) - 1992年10月16日 (金)~11月5日 (木)
西洋絵画名作展—ルネサンスから印象派、20世紀の絵画 中国美術館(中国、北京) - 1990年11月3日 (土)~12月2日 (日)
西洋絵画名品展 湖巖美術館(韓国、京畿道龍仁郡) - 1990年9月22日 (土)~10月21日 (日)
西洋絵画名品展 中央日報・湖巖ギャラリー(韓国、ソウル)
来歴
- Provenance:
Ernt Hoschedé, Paris
Sale,Paris, 5-6 June 1878, lot 82 (as La Route de Marly,181 frs. to Dolfus)
J.Dolfus-Zygomalas, Paris, by whom acquired at the above sale
Durand-Ruel, Paris (13874, as La route tournante)
Mme. Alexandre Rosenberb,Paris
Paul Rosenberg & Co. Paris and New York
Exhibited:
Paris, Durand-Ruel, Tableaux de Sisley, Feb. –March 1930, no.21
参考文献
F. Daulte, Alfred Sisley, Catalogue raisonné de l’œuvre peint, Lausanne, 1959, no.130 (illustrated)
東京富士美術館
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・創価大学循環
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・創価大学循環
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京王八王子駅
西東京バス4番のりばより
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・創価大学循環
「創価大正門東京富士美術館」で下車
JR拝島駅 ※1時間1本程度運行
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JR秋川駅 ※1時間1本程度運行
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