
月岡芳年《義経記五條橋之図》明治14年(1881) 町田市立国際版画美術館蔵 [後期展示]
『サムライ・アート展』に出品されている作品をご紹介いたします。
ひらりと宙に舞い、扇を投げつける牛若丸。武蔵坊弁慶がそれを長刀の柄で受け止めています。千本の太刀を奪う誓願を果たそうとする弁慶は、牛若丸の太刀に目をつけますが、鞍馬山の天狗を相手に稽古を重ねた牛若丸には歯が立ちません。降伏した弁慶は、牛若丸と主従の盟を結ぶことになります。
本図では一段と低い視点から橋をとらえ、上空に浮かんだ大きな満月も相まって、対決の場が劇的に演出されています。透視図法によってとらえられた橋を舞台に、二人の動線が扇状をなす幾何学的な画面構成です。
五條橋での二人のめぐり逢いは古くより武者絵の画題とされ、芳年もたびたび手掛けました。