
上村松園(1875-1949)《楊貴妃》大正11年(1922) 松伯美術館蔵
現在開催中の「上村松園・松篁・淳之 三代展」に出品されている作品をご紹介させていただきます。
4年ぶりに第4回帝国美術院展覧会(以下、帝展)へ出品した作品です。入浴を終え、給女に髪を整えてもらう泰然自若とした楊貴妃の姿が描かれています。紗でできた障子が手前に配されることで画面に変化が生まれ、前後の空間を意識させることにつながります。また本作に関する素描が2 点残っていますが、本画では、素描で描いた人物よりも眼が切れ長となり、円山四条派の先達たちの先行作品に寄っています。本作で松園は珍しく半裸の姿を描いているが、紗の衣と胸元の装飾が施されることにより、乳房は画面の中に溶け込み、卑俗さは避けられ、裸体画であるという感覚を薄めることに成功するとともに、画面全体に高貴な気品を与えています。