
本展出品作品をご紹介いたします。(※ 新型コロナウイルス感染症の感染予防・拡散防止のため、当面の間、臨時休館をしております)
《白地彩画花文筒形杯》《白地彩画花文皿》
トルコ、イズニーク
17世紀
本作はオスマン帝国の中心的な窯業地として発達し、良質な粘土が産出されたトルコのイズニークで17世紀に生産された花文筒形杯と花文皿である。イズニークでは、宮殿やモスクなどの建築物の壁面を装飾するタイルと、食器や儀式用の道具として使われる陶器が盛んに生産され、チューリップやバラ、カーネーションなどの文様が使用された。とりわけ、トルコが原産地のチューリップはトルコの人々にとって特別な意味を持つ花であった。トルコ語でチューリップを意味する「ラーレ」は、イスラム教の神「アッラー」と同じアラビア文字で綴られる。さらに、一つの球根から一本の茎、一つの花ができるというチューリップの特性は、イスラム信仰における「神の唯一性」も示唆すると考えられた。オスマン帝国が文化、芸術面で最盛期を迎えた16世紀の皇帝スレイマン1世はチューリップをこよなく愛し、その情熱や愛情を詩で詠んだほどであった。「トマト赤」とよばれる、盛り上がりのある鮮烈な赤色がイズニーク陶器の特徴で、上品な華やかさを引き立てている。