
「遥かなるルネサンス」展に出品されている作品を紹介します。
パオロ・ヴェロネーゼ(パオロ・カリアーリ)
《息子アンテロスをユピテルに示すヴィーナスとメルクリウス》
1561-65年頃 油彩、カンヴァス 150 x 243 cm
フィレンツェ、ウフィツィ美術館
Gabinetto Fotografico delle Gallerie degli Uffizi
女神ヴィーナスとメルクリウスとの間にはエロスという息子が生まれましたが、成長が止まってしまいます。息子の身を案じたヴィーナスは、女神テミスのもとを訪れると、「弟の誕生によりエロスの健康は回復するだろう」という神託が下されました。ここには、ヴィーナスが夫メルクリウスと共に、誕生した次男アンテロスをユピテル神殿に奉献する場面が描かれています。
パオロ・ヴェロネーゼはヴェネツィアを拠点に活躍した画家です。画面上部に配置された祭壇には、神の姿が描かれていますが、脛(すね)と右手だけしか見えません。しかしながら、ユピテルを象徴する鷲の存在によって、この神がユピテルであることがわかります。あたかも舞台芸術のようなこの構図は、神話的・象徴的主題とともに1560年代のヴェロネーゼの特徴をよく示しています。