
「遥かなるルネサンス」展に出品されている作品を紹介します。
ローマの画家(?)
《ヨーロッパ内外にセミナリオを設立するグレゴリウス13世》
16世紀末-17世紀初頭 油彩、カンヴァス 190 x 280 cm
ローマ、グレゴリアン大学
画面中央の天蓋(てんがい)の下に座った教皇グレゴリウス13世が、世界各地でのセミナリオやコレジオなどの神学校を設立する計画を、イエズス会士たちに託(たく)す場面が描かれています。
1585年3月23日、少年使節一行はローマの地で教皇グレゴリウス13世に謁見します。一行を歓迎するために、ローマ市内ではパレードが行われ、町の沿道の窓からは歓迎の垂れ幕が飾られ、祝砲が鳴り響きました。謁見式では、彼らを派遣したキリシタン大名、有馬晴信の書状が朗読され、病気で欠席した中浦ジュリアンを除く3人の少年達が教皇に挨拶をしましました。このとき教皇グレゴリウス13世は涙を流しながら彼らを讃(たた)え、手を取り抱きしめたといいます。この日本からの少年使節の訪問は、歴史的な出来事として記録され、多くの書籍が出版されました。
この謁見からわずか18日後の4月10日、グレゴリウス13世は死去します。教皇は最期まで「日本の少年たちはどうしているか?」と気遣っていたといわれています。
本作のなかで、跪(ひざまず)くイエズス会士が教皇から渡されている書類には「日本(ヤポニクム)」の文字が見えます。グレゴリウス13世の遺徳を讃えるために描かれた本作に、「日本」の文字が描き込まれているということは、少年使節たちの来訪が、当時のヨーロッパの人々にとっていかに大きな出来事であったかを物語っています。
この作品は、イエズス会士の教育が行われていたローマ学院の中央入口に飾られていました。