
「遥かなるルネサンス」展に出品されている作品を紹介します。
ブロンズィーノ(アーニョロ・ディ・コジモ・トーリ)
《ビア・デ・メディチの肖像》
1542年頃 油彩、板 64 x 48 cm
フィレンツェ、ウフィツィ美術館
Antonio Quattrone, Firenze
トスカーナ大公コジモ一世の長女として知られる《ビア・デ・メディチの肖像》です。彼女は、コジモ1世が正妻エレオノーラ・ディ・トレドと結婚する前に、フィレンツェの貴婦人との間に生まれた子といわれています。異母兄弟とともに宮廷で大切に育てられましたが、1542年1月にわずか5歳もしくは6歳で亡くなりました。首から下げた大ぶりのチェーンの先には父コジモ一世の横顔が彫られたメダル。婚外子であってもメディチ家の一員として認められていたことを示しています。
ビアの死をとても悲しんだコジモ1世は、娘の思い出としてこの絵を描かせ、ヴェッキオ宮殿に飾らせました。絵が描かれてから約40年後、フィレンツェを少年使節が訪れます。彼らは当時のメディチ家当主フランチェスコ1世の住居だったヴェッキオ宮殿に数日間滞在し、いろいろな場所を見学しています。おそらくその時、少年たちは、日本人としてはじめてこの絵を見たにちがいありません。
この絵の作者は、1540年代にフィレンツェ公の肖像画家として活躍したアーニョロ・ブロンズィーノ。ブロンズィーノの画業のなかで、最も成功を収めた作品であると同時に、最も悲哀に満ちた作品の一つです。
メディチ家の至宝であるこの絵は、これまでイタリア国内はおろかフィレンツェ市を出ることもほとんどありませんでしたが、ウフィツィ美術館の協力と、作品を保護する特別な装置の開発で、今回初めて日本で展示することができました。