
現在開催中の「花鳥風月ワンダーランド」展も残すところ1週間余りとなりました。本展の後期展示作品の中から主要なものをご紹介します。
芸術の秋。日本人に宿る自然を愛(め)でる美しい心を当館所蔵の美術作品を通して、再確認してみてはいかがでしょうか。
谷文晁(1763-1841)
《青緑山水図》
文政5年(1822)
絹本着色 軸装
深山幽谷の蜀の桟道を見事に描きあげている。岩山を描いた厳格な墨線に文晁が取り入れた北宗画的な特徴を見ることができる。山道を行く人馬の周囲には群青、緑青、代赭(たいしゃ)などで彩られた木々が配置され、堅調な画面に温かみを加えている。この年、文晁は還暦を迎えるが、画面に退廃的な要素は見つからず、むしろ充溢した気力を窺(うかが)わせる。世に乱作期と酷評された「烏(からす)文晁」の時期に当たるが、その評価を払拭(ふっしょく)する渾身の一作といえよう。