
現在開催中の「花鳥風月ワンダーランド」展も残すところ2週間余りとなりました。11/25より後期展示が始まっております。今週から11回に分けて、本展の後期展示作品の中から主要なものを紹介していきます。
芸術の秋。日本人に宿る自然を愛(め)でる美しい心を当館所蔵の美術作品を通して、再確認してみてはいかがでしょうか。
伊藤若冲(1716-1800)
《象図》
寛政2年(1790)
紙本墨画 軸装
象を画面いっぱいに真正面から描く。細長い画面を逆手にとった意表を突く大胆な構図である。本来は白紙の、象の背景となる部分を全て墨で塗りつぶして、象を引き立てているのも効果的である。単純な作風にみえるが、淡墨と濃墨を細心の配慮をはらい用いていることが理解できる。これは拓版画の効果を肉筆画に応用したものと推測される。背中を三本の曲線だけで表わすなど抽象化されており、興味深い。その落款(らっかん)と印章から若冲70歳代半ばの作と知れる。