
開催中の浮世絵展の展示作品を随時ご紹介します。
柳斎重春
三代目中村歌右衛門の自来也
天保3年(1832)
天保3年(1832年)に演じられた歌舞伎『柵自来也談』に取材したもの。この歌舞伎は、盗賊自来也の義勇を中心とする大活劇物である。画面左上には、銀摺で「春の香は残らぬ梅のもみち哉(春の梅花は高貴な香を残すが、同じ紅色でももみじでは香らない) 梅玉」との句が書かれている。梅玉は歌右衛門の俳名である。自来也の背後に群れをなす子分たちを、淡い色調で描き、先頭にたつ自来也を鮮やかな色彩で配置した構図は見事である。