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「ロイヤル・アカデミー展」出品作品紹介(9)

開催中のロイヤル・アカデミー展の出品作の解説を随時ご紹介します。

チャールズ・ウェスト・コウプ(1811-1890)
《1875年度のロイヤル・アカデミー展出品審査会》
1876年 油彩/カンヴァス 145.2×220.1cm
ジョージ・ムーアより1876年に寄贈
© Royal Academy of Arts, London; Photographer: John Hammond

ここは現在に続くアカデミーの拠点、バーリントン・ハウスのギャラリーの中。アカデミー会員たちが年次展覧会(アニュアル・エキシビション)の出品作品を審査している。アカデミーは設立当初より、画家に作品発表の機会を提供するため、誰でも応募可能な年次展覧会を開いてきた。会員以外は厳しい審査を通過しなければ展示には至らない。
シルクハットを被り、手に小槌を持つのは時の会長でこのバーリントン・ハウスの入手に成功したフランシス・グラント、画面左端に座る黒髭の男は次期会長のフレデリック・レイトン、そして中央手前でこちらに背を向けて座るのがレイトンの次の会長で、ラファエル前派を立ち上げたJ.E.ミレイである。作者であるコウプ自身は、会長グラントの後方奥でこちらに目線を投げかけている人物である。他にも当時の会員の面々が見られる。
画面右側では回転式の台に審査する作品を乗せ、その横で男がチョークを手に持ち、受入であればAcceptedのA、対応を決めかねる場合はDoubtfulのD、拒否の場合はRejectedのRというように、作品の後ろに審査結果を記す。
奥の展示室では作品を運ぶ労働者の様子が窺える。写真のように細部に至るまで自然で明快に描かれた本作からは、当時の出品審査会の様子が臨場感を持って伝わってくるようである。
コウプは水彩画家の父を持ちイギリス・リーズに生まれ、1828年にアカデミー・スクールに入学、母子のいる室内画で好評を博した。1842年には国会議事堂装飾画コンペティションで1等を得ている。

東京富士美術館 学芸員 平谷美華子(ひらやみかこ)

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