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「ロイヤル・アカデミー展」出品作品紹介(8)

開催中のロイヤル・アカデミー展の出品作の解説を随時ご紹介します。

フランク・カダガン・クーパー(1877-1958)
《虚栄》
1907年 油彩/板 57.1×38.1cm
ディプロマ作品 1936年受入
© Royal Academy of Arts, London; Photographer: John Hammond

アカデミー・スクール在学中(1897-1902年)にラファエル前派の回顧展に強い影響を受けたクーパーは、ラファエル前派、最後の継承者とみなされている。モダン・アートが台頭する時代にあって、流行に左右されることなく、聖書や歴史を題材にした作品や寓意画などを、鮮やかな色彩を用いて細部にいたるまで精密に描き評価を高めた。1910年には国会議事堂の廊下に壁画を描いている。
本作のテーマと構図はイタリア・ルネサンス絵画に由来する。熟して重くなった豊かさと喜びを示すブドウの木の前で、美しく着飾った女性がたたずむ。よく見ると、彼女の虚栄心は、薄目を開け、手に持った鏡に映る自分の美しさを確認している姿に表現されている。写実的な描写で美を徹底的に追求したラファエル前派の影響が色濃く残る一枚である。

東京富士美術館 学芸員 平谷美華子(ひらやみかこ)

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