
開催中のロイヤル・アカデミー展の出品作の解説を随時ご紹介します。
ジョン・カンスタブル(1776–1837)
《水門を通る舟》
1826年 油彩/カンヴァス 101.6 × 127 cm
ディプロマ作品 1829年受入
© Royal Academy of Arts, London; Photographer: Prudence Cuming Associates Limited
画家の故郷イングランド東部サフォク州を流れるストゥーア川の水門。そこへ一台のボートが差し掛かかり、中央の男が水門を操作している。画面左上から迫り来る荒天は画面全体に緊張感を与えている。
20歳で画家を志し、24歳でアカデミー・スクールに入学したカンスタブル。同じく風景画家の巨匠ターナーとは同世代であるが対照的である。都会育ち、劇的な画面を創造し、27歳の若さでアカデミー正会員になったターナーに対し、カンスタブルは田舎育ち、終生愛する故郷の風景を描き続け、正会員になったのは53歳であった。
印象派に先駆けて野外での制作を始め、特に天候により刻々と変化する雲や光の効果の描写を探求し、パリのサロンに出品した際にはロマン派の画家ドラクロワらにも影響を与えた。
東京富士美術館 学芸員 平谷美華子(ひらやみかこ)