
開催中のロイヤル・アカデミー展の出品作の解説を随時ご紹介します。
ヘンリー・レイバーン(1756–1823)
《少年とうさぎ》
1814年頃 油彩/カンヴァス 103 × 79.3 cm
ディプロマ作品 1816年受入
© Royal Academy of Arts, London; Photographer: John Hammond
ペットのウサギを守るように優しく腕をまわし、自然な愛らしい表情でこちらを見つめる少年。肖像画ともいえるが、日常生活のひとこまを描いた風俗画にも見える。モデルは画家の孫で大のお気に入り。当時、肖像画は注文を受けて描くことが常であったが、本作は依頼されて描いた作品ではない。画家の愛情深い眼差しが画面全体から感じられ、自然な仕草に興味を持ち続けた画家の特徴がよくみられる。
レイバーンはエジンバラに生まれ、スコットランド人初の国民画家といわれるほどに、時の優れた肖像画家として活躍した。15歳で金細工師の見習いとしてジュエリーなどの制作に携わり、その後、細密画家の見習いを経て、20代より肖像画家としての道を歩んだ。
本作がアカデミー会員に選出された際に寄贈したディプロマ作品であることからも、19世紀初頭、風俗画が徐々にアカデミーにも容認されるようになった歴史の流れの一端をも垣間みられる一枚である。
東京富士美術館 学芸員 平谷美華子(ひらやみかこ)