
開催中のロイヤル・アカデミー展の出品作の解説を随時ご紹介します。
トマス・ゲインズバラ(1727–1788)
《泉に羊のいるロマンティックな風景》
1783年頃 油彩/カンヴァス 153.7×186.7 cm
マーガレット・ゲインズバラより1799年にロイヤル・アカデミーに寄贈
©Royal Academy of Arts, London; Photographer: Prudence Cuming Associates Limited
ゲインズバラは故郷イギリス・サフォク州の自然をこよなく愛し、後にカンスタブルらにも多大な影響を与えた。1782年から83年にかけて、イギリス西部と湖水地方を訪れて感銘を受け、以降、1780年代の彼の風景画はより雄大で崇高なものへと向かった。本作では、羊や羊飼い、そして泉で水を飲む一匹の山羊など牧歌的な情景を思わせるが、真の画題は高くそびえる岩や遠方の山脈へと延びる森林や城の遠景である。
東京富士美術館 学芸員 平谷美華子(ひらやみかこ)/「華麗なる英国美術の殿堂 ロイヤル・アカデミー展」カタログ所収