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2014.09.25

ロイヤル・アカデミー展に寄せて ─ 館長 五木田聡

ロンドンのランドマークとして知られるピカデリー・サーカスに程近い場所に、バーリントン・ハウスと呼ばれる建物があります。1867年以降、約150年にわたってロイヤル・アカデミーの本拠地として使われ、アカデミー会員の活躍の舞台となっているところです。ここでは、毎年夏になると、サマー・エキシビション(会員たちによる年次展覧会)が開かれます。アカデミーと市民、芸術と人間を結ぶ、開かれた展示即売の催しとして、ロンドンっ子に親しまれています。そのギャラリーでは、世界中の作家や美術館から作品を借りて、多彩な美術展が開かれます。それらの展覧会は、文化都市ロンドンを彩る質の高い内容を誇り、そこからまた世界に向けてメッセージを発信する文化装置にもなっています。

東京富士美術館とロイヤル・アカデミーとの連携は、1999年の「20世紀のモネ展」に当館所蔵のモネ《睡蓮》をお貸ししたのがスタートです。2007年には「海辺の印象派展」にモネ《プールヴィルの断崖》を、2013年には「マネ:人生の描写展」にマネ《散歩》をお貸ししました。当館の常設展示室の印象派の部屋を飾っている14点の作品のうち、3点がロイヤル・アカデミーの展覧会のために海を渡りました。そして本年、ロイヤル・アカデミーから約90点の名作群が、海を渡って日本にやってきてくれました。

この展覧会に合わせて、当館の常設展示室内にイギリス絵画の部屋を特設いたしました。当館の油彩画コレクションのなかには、歴代のロイヤル・アカデミー会員だった画家たちの作品が含まれています。1832年のロイヤル・アカデミー出品作となったターナーの作品は、ライバルのカンスタブルとの興味深いエピソードで良く知られた作品です。ロイヤル・アカデミー展の作品とともに、これらの館蔵品をご覧いただくことで、イギリス絵画への理解がいっそう深まることでしょう。

ロイヤル・アカデミーの会員の定数は80名で、その会員の推薦により会長が決まります。第26代目となる現会長のクリストファー・ル・ブラン氏は、開会式参加のために来日され、展示をご覧になりました。そして「いつも見慣れた私たちの作品が、この展示室ではひときわ輝いて見えます。こんな名作ばかりを揃えるなんて・・・あり得ない。お貸しするんじゃなかった、と後悔しています(笑)。もう二度とこんな展覧会はできないでしょう」と語っておられました。ロイヤル・アカデミーは2018年に創立250周年を迎えます。ホックニー、ゴームリー、カプーアなど、現代美術の旗手たちが会員メンバーに名を連ねるロイヤル・アカデミーの、今後の動向にも目が離せません。これからロンドンに行かれる方は、ぜひロイヤル・アカデミーを訪ねてみてください。紅茶がお好きな方は、美術鑑賞のあと、アカデミーの前にあるフォートナム&メイソンでアフタヌーンティーを楽しんでみてはいかがでしょうか。

(写真:サマー・エキシビションを開催中のロイヤル・アカデミー、2007年)

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