
現在好評開催中の「江戸絵画の真髄」展、初公開作品18点を含む70点の江戸絵画の魅力満載の展覧会です。そこで、“見逃せない”作品をピックアップしてシリーズでご紹介して行きたいと思います。
鈴木其一(きいつ、1796-1858)
《萩月図襖(ふすま)》
江戸時代後期
絹本着色・襖(四面)
168.8×68.5cm(各)
※展示期間:全期(4月8日〜6月29日)
萩と月は秋を表す好画題といえます。左右から伸びた紅白の萩は緩(ゆる)やかな動きをもって、対角線上に配置されています。花房と葉の表現には、輪郭線(りんかくせん)を引かず、陰影や立体感を表す付け立ての技法がとられ、葉の葉脈(ようみゃく)には金泥(きんでい)を施(ほどこ)しています。月下の葉色に変化をつけ、絹地の背景に銀泥(ぎんでい)を引くことで月光を演出するなど、こうした其一の細部へのこだわりが画面に程よい緊張感をもたらすとともに、江戸琳派(りんぱ)特有の美麗(びれい)で瀟洒(しょうしゃ)な品格を醸(かも)し出しています。
(東京富士美術館 学芸員 宮川謙一)