
現在好評開催中の「江戸絵画の真髄」展、初公開作品18点を含む70点の江戸絵画の魅力満載の展覧会です。そこで、“見逃せない”作品をピックアップしてシリーズでご紹介して行きたいと思います。
岸駒(がんく、1756/1749?-1839)
《猛虎之図》
江戸時代中期
紙本墨画・軸装
130.0×67.2cm
※展示期間:前期(4月8日〜5月18日)
全身の毛を逆立てて威嚇(いかく)する様子の虎を、正面から描いた作品です。今にも襲いかかってきそうな鋭い眼光が印象的で、緊迫感があります。また岸駒の特徴である震えるような線描で、虎の凶暴感が増幅され迫力があります。「虎図は岸駒」といわれるほど人気がありました。虎を描くために、岸駒は毛皮に加え、頭蓋骨(ずがいこつ)などを手に入れて、その構造を熱心に観察し、イメージを膨らませたといいます。微妙に曲がった前足の描写などにその研究の成果が表れているようです。
(東京富士美術館 学芸員 白根敏昭)