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「江戸絵画の真髄」展出品作品紹介(1)

現在好評開催中の「江戸絵画の真髄」展、初公開作品18点を含む70点の江戸絵画の魅力満載の展覧会です。そこで、“見逃せない”作品をピックアップしてシリーズでご紹介して行きたいと思います。

伊藤若冲(1716-1800)
《象図》
寛政2年(1790)
紙本墨画・軸装
155.5×77.3cm
※展示期間:全期(4月8日〜6月29日)

象を画面いっぱいに真正面から描いています。細長い画面を逆手にとった意表を突く大胆な構図で、背景となる部分を全て墨で塗りつぶして、象を引き立てているのも効果的です。単純な作風にみえますが、淡墨(たんぼく)と濃墨(のうぼく)を細心の配慮をはらい用いていることが理解できます。これは拓版画の効果を肉筆画に応用したものと考えられます。本作と同様に正面から描いた象の類作が知られていますが、それは明和5年(1768)作で、より本物に近くリアルに描かれています。それと比較すると本作はより抽象化されていて、三本の曲線だけで背中を表わすなど大変に興味深い作品です。落款と印章から若冲70歳代半ばの作と知ることができます。

(東京富士美術館 学芸員 白根敏昭)

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