
現在好評開催中の「中国陶磁名品展」、ユニークな器形、豊かな色彩、技量の見事さ等々、懐の深い中国陶磁の魅力に、1点1点時間をかけて丹念に鑑賞されているお客様が多くいらっしゃいます。そこで、特色のある“見逃せない”作品をピックアップしてシリーズでご紹介して行きたいと思います。
本日は羽根のような軽さにびっくり!? “象牙色の肌が美しい蓮の花弁と葉を刻んだボウル”です。
出品番号50
定窯《白磁刻花蓮華文鉢(はくじこっかれんげもんはち)》
金(12世紀)
高15.0cm、口径33.5cm、底径14.7cm
大変薄作りの深鉢で、外側には三重に鎬(しのぎ)蓮弁を浮き彫り風に施し、内面には蓮の葉を線刻で伸びやかに表す。定窯では、碗や鉢を量産するために、口の部分を下にし、匣鉢(さやばち)と呼ばれる陶製の容器の中で幾つも重ねて焼成する。これは伏せ焼きと呼ばれる方法で、釉着を防ぐため、口は、釉薬を剥ぎ取り無釉にする。また、定窯に特徴な象牙色の肌は、窯の燃料が薪ではなく、石炭であるため、炎が高く上がらず、酸化気味に焼成されることに起因すると考えられている。
兵庫陶芸美術館 学芸員 松岡千寿/「中国陶磁名品展」カタログ(編集:兵庫陶芸美術館、2012年発行)所収