
クロード・モネ(1840-1926)
《睡蓮》
1907年 油彩/カンヴァス 直径 81.0 cm
右下に署名、年記: Claude Monet 1907
サン=テティエンヌ近代美術館
Musée d’Art Moderne de Saint-Etienne Métropole Droits photographiques : Yves Bresson
モネがジヴェルニーの自邸の庭を拡張し、エプト川の支流リュ川から水を引いて池のある日本庭園を造成したのは19世紀末のこと。池に睡蓮を浮かべ、日本情緒漂う人工の空間を演出した彼が、ついには自作の絵画のテーマに睡蓮そのものを登場させ、その連作に励むようになるのは20世紀初頭のことである。モネは1907年から1908年にかけて、数多くの《睡蓮》を制作したが、そのうち4点は本作のようなトンド(円形画)のフォーマットである。円形の画面に描かれる絵画は、伝統的に東洋にもあり、西洋ではイタリアのルネサンス期の絵画に見られるように珍しいものではないが、この画面形式を採用した理由は、展覧会を意識して全体の構成に変化をつけようとしたからであろう。モネは画商のデュラン=リュエルに1907年に開催する予定だった展覧会の延期を申し入れ、更に翌1908年にも再延期を申請して、1909年5月にようやく「睡蓮、水の風景の連作」と題した個展の開催にこぎつけた。パリのデュラン=リュエル画廊に48点の睡蓮が並び、この個展は大好評であった。本作もその展覧会場を彩った一点(出品番号34)である。
東京富士美術館 館長 五木田聡(ごきたあきら)/「光の賛歌 印象派展」カタログ所収