
クロード・モネ(1840-1926)
《ジヴェルニーの林、イーゼルに向かうブランシュ・オシュデと本を読むシュザンヌ・オシュデ》
1887年 油彩/カンヴァス 91.4 × 97.8 cm
右下に署名:Claude Monet
ロサンゼルス・カウンティ美術館
Digital Image © 2013 Museum Associates / LACMA, Licensed by Art Resource, NY
モネが1883年にジヴェルニーに移ってきたとき、妻カミーユはすでに世を去り、彼の二人の子どもと、パートナーであったアリス・オシュデ、そしてアリスの二人の息子と四人の娘が一緒であった。アリスは印象派コレクターでモネの理解者だったエルネスト・オシュデの妻で、1878年に夫が破産宣告を受けてから、一家はヴェトゥイユでモネ一家と共同生活を営んでいたが、1879年にモネの妻カミーユが亡くなると、エルネストは一人パリで単身生活を送り、残された家族がモネと行動をともにしていたのである。アリスは夫の死後、1892年にモネと再婚することになる。そうした初期のジヴェルニーでの日々、モネは戸外でオシュデ家の家族を描いた。本作では、家の近くにある林で、アリスの娘たち―絵筆を取る次女ブランシュと読書する三女シュザンヌ―をモデルに、「家族の幸福な時間」をカンヴァスに留めている。ブランシュは画家で、彼女にとってモネは絵の教師でもあった。一方、シュザンヌはモネのお気に入りのモデルでもあった。のちにブランシュはモネの長男ジャンと結婚、シュザンヌは米国人画家と結婚した。ここでモネは、光によって自然を観察する手法はやめ、リズミカルな木の幹の反復を縦糸に、装飾的、平面的な手法で二人の人物を風景の中に溶け込ませている。
東京富士美術館 館長 五木田聡(ごきたあきら)/「光の賛歌 印象派展」カタログ所収