カミーユ・ピサロ(1830-1903)
《小川で足を洗う女》
1894/95年 油彩/カンヴァス 73.0 × 92.0 cm
左下に署名、年記:C. Pissarro. 1895
シカゴ美術館
本作品と非常によく似た構図の裸婦の水浴図《森の中の浴女》(メトロポリタン美術館)が知られている。それは本作品と同じような森の中にある小川の川辺が舞台である。西洋の伝統的な人気主題で、裸婦を描く際の口実でもある「スザンナの水浴」をイメージさせるものだが、それは本作において成功した着衣の農婦像を発展させ、裸婦に置き換えたヴァリエーションの一つである。ここでピサロは木漏れ日を浴びる一人の若い女性を柔らかな光の中に捉えている。独特のアングルから人体を大きく捉えた構図は素晴らしく、ピサロの熱心な研究の成果が認められよう。ピサロはこのようなタイプの人物画を描くときは、デッサンをもとにアトリエで制作を行った。点描技法の影響が見られるが、厳密な技法の駆使ではなく、彼らしい穏やかでのんびりとした画面のなかに、その粒子は溶け合っているかのようだ。この作品はピサロの死後、1904年にパリのデュラン=リュエル画廊で展示された後、個人所蔵となっていたが、1999年、シカゴのサラ・リー・コレクションよりシカゴ美術館に寄贈され、その収蔵品となった。日本初公開の作品。
東京富士美術館 館長 五木田聡(ごきたあきら)/「光の賛歌 印象派展」カタログ所収