墨水夜月図 Reeds with Moon
文化13年(1816)/絹本墨画 軸装
109.5×36.0cm
SUMMARY作品解説
ファインバーグコレクションに本作と類似する《秋夜名月図》が存在する。同作は文化14年の作であるから本作はその前年の作となる。仲秋の名月であろうか。雲上の月を背に手前に大きく芦の葉を配する。右脇の上下には香川景樹の「墨田川 よるの渡しの ゆう汐に おくれてのぼる 月の影かな」の句が認められており、面白い。景樹は京で活躍した歌人であるが、おそらく大阪の文人木村蒹葭堂を介して、文晁との交友が生まれたのであろう。
ARTIST作家解説
谷文晁
Tani Buncho1763-1840
江戸に生まれる。名、字ともに文晁。はじめ加藤文麗、後に渡辺玄対に師事。「八宗兼学」の理念のもと、中国画や洋風画、土佐派、琳派、円山四条派など広く学ぶ。天明8年に仕官。後に老中松平定信の近習となり、《公余探勝図巻》や『集古十種』の制作に携わる。木村蒹葭堂ら多くの文人とも交遊した。異なる画派の特徴を折衷させた多様な画風を示した。渡辺崋山ら多くの門人を出し、関東方面に南画の新たな画派を生んだ。78歳で没。