1896年/油彩、カンヴァス
118.0×89.5cm
西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで
会期:2025年01月11日 (SAT)~2025年03月23日 (SUN)
東京富士美術館:新館・常設展示室3
西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで
会期:2025年04月12日 (SAT)~2025年06月22日 (SUN)
東京富士美術館:新館・常設展示室5
SUMMARY作品解説
「坐る裸婦の大作または浴後の女」というタイトルが付けられた本作品は、ルノワールがその画業の後期に取り組んだ裸婦像の輝かしい成果のひとつである。 1896年5月、ルノワールはパリのデュラン=リュエル画廊で個展を開催し、そのあと7月にモンマルトルのラ・ロシュフーコー街に転居した。本作はその年に描かれ、3年後の1899年1月にデュラン=リュエルの手に渡り、それから更に3年たった1902年6月にパリのデュラン=リュエル画廊で行われた「ルノワール展」で展示されたものである(この展覧会にはルノワールの近作40点が出品され、本作は出品番号23の作品として記録が残っている)。その後、スイスのヴィンタートゥールの世界的に著名な蒐集家オスカー・ラインハルトのコレクションを経て、当館の所蔵となっている。ルノワールは本作を描いてからほどない1898年暮れには、右腕がきかなくなるほどリューマチが悪化しており、その後も健康は悪化する一方で、左目の筋の部分的な萎縮とリューマチの激しい発作に襲われ続けた。このように身体は病気に苛まれても画術はますます円熟の一途をたどり、ルノワールの裸婦像は他の追随を許さぬモニュメンタルな人体表現として発展していった。水浴の後で足を拭くポーズの裸婦像は、1902年から06年頃にかけて、屋外で脚を組んで坐り、白い布をもつ右手で左脚を拭き、左手で髪を撫でる姿のヴァリエーションで4点描かれている(ウィーン美術史美術館、デトロイト美術研究所の作品など)。 これらの作品群と本作の異なる点は、本作の方は室内でクッションの上に腰をかけ、身体を横から捉えた構図であり、脚は組まずに右脚を拭くポーズとなっている点である。その人体表現の彫塑的なヴォリューム感は、晩年の彼の彫刻作品を思わせるほどで、ふくよかな量塊の把握が見事である。また色彩は、健康的な肌色が生命の讃歌を歌い上げるように輝き、白い布や黄色、オレンジ色、緑色、茶色といったルノワール絵画の属性となっている親密な色彩群──黒色を排除し最高の強度をもった純色のみに限定した配色は「虹色のパレット」と呼ばれる──と混然一体となって眼を楽しませてくれる。マチエールについて言えば、絵画というよりは滑らかな陶磁器の表面のような質感をも感じさせる(リモージュに生まれたルノワールは、10代の頃に陶磁器の絵付け職人として働いていたことがあった)。 ルノワールが裸婦を好んで描いたのは、彼にとって自然がもたらしてくれた恵みの中で最高の形象が女性の身体であり、その健康美を愛で、祝福し、永遠の映像として定着させる行為が絵画という手段であったからである。その意味で、ルノワールを印象主義という枠だけで定義することは不可能であり、むしろティツィアーノ、ルーベンスといった偉大な絵画の先達の系譜に連なり、ブーシェにも共通する職人芸をもった画家として認識することが必要であろう。
ARTIST作家解説
ピエール=オーギュスト・ルノワール
Pierre-Auguste Renoir1841-1919
フランス中西部のリモージュに仕立屋の息子として生まれた。はじめ磁器の絵付け職人を志すが、後に絵画の道を目指す。20歳の頃、シャルル・グレールのアトリエでクロード・モネやアルフレッド・シスレーらと出会い、印象派の技法をとり入れ、戸外の光に包まれた人々の姿を描いた。1881年のイタリア旅行以降はラファエロ・サンティに傾倒し、「アングル風」といわれた明確な描線と寒色を基調とする画風に転じるが、1890年頃には柔らかみをそなえた彼独特の女性像の確立する。晩年は、南フランスのカーニュに定住し、裸婦をテーマに独自の甘美な世界を画面に創造し続けた。
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INFORMATION作品情報
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Provenance: Galerie Durand-Ruel, Paris (25 Jan, 1899, purchased from the painter for 3,000F.) A.A. Hebrard, Paris (3 Feb, 1906, purchased from Durand-Ruel for 110,000F) Lord Alexandre de Wagram, Paris Co.M. Knoedler, New York Oscar Reinhardt, Winterthur (Switzerland) Private Collection, Switzerland Exhibited : Renoir, Galerie Durand-Ruel, Paris, 1902, no.23 Renoir and the Painter of the Postimpressionism, Alex Reid and Lefevre, London, 1930, no.10
Literature : Ambroise Vollard, Salon of Mrs. Carhpentier, L’Art et les Artistes, Paris, 1920, p.166, no.4 H. de Régnier, Renoir: Nude, Paris, 1923, pl.no.167 Gustave Coquiot, Renoir, 1925, p.225 Michel Florisoone, Renoir, London-Toronto, 1937, p.131 François Daulte, Catalogue raisonné de l’Œuvre peint de Renoir, Tome 2 Figures, 1891-1905, no.757 [En prépation]
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作品詳細の音声ガイドは、すべて東京富士美術館の公式ナビゲーターである、本名陽子さんに勤めていただいております。本名さんは声優、女優、歌手として幅広く活躍されています。