1894年/グワッシュ、カンヴァスで裏打ちされた紙
169.5×76.7cm
西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで
会期:2025年04月12日 (SAT)~2025年06月22日 (SUN)
東京富士美術館:新館・常設展示室6
西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで
会期:2025年07月12日 (SAT)~2025年09月15日 (MON)
東京富士美術館:新館・常設展示室6
SUMMARY作品解説
1791年、パリに創業したカフェ・リッシュは、イタリアン大通りとル=ペルティエ通りの角にあるパリを代表する評判の店で、多くの政治家や芸術家、作家などが集う場所だった。1894年の改装にあたり、建築家アルベール・ラリュの指揮の下、多くの芸術家たちが装飾に関わった。その中二階の外側窓間壁には17枚のモザイク壁画が飾られることとなり、フォランが描いた下絵をもとに、イタリア人モザイク作家ファッキーナの工房が制作を担当した。 そこに描かれた題材は、「自転車に乗る人物」「夜食」「スミレを売る少女」「街の新聞売り」「競馬場で帽子を被った若い女性」「ワルツ」「舞踏会の告白」「仮面と黒手袋の女」「トルーヴィルでデッサンをするフォラン」「婦人服店の娘」など、新聞や雑誌のフォランの挿絵に出てくるような人物たちであった。当時としては斬新な題材によって制作されたそれらの壁画は、作家のゴンクールが「おお!カフェ・リッシュの新しい装飾、私はあんなに卑しく醜いものは見たことがない。東洋風建築とフォーブール・サン・タントワーヌのルネサンス様式の寄せ集めの上に、フォランの不気味なフレスコ画とラファエリの色とりどりのカリアティッド。嗚呼!金と白で統一された私の昔ながらのカフェやレストランよ!」と嘆いたように、高級レストランの外壁を飾るにはおよそ似つかわしくないものであると世間から酷評された。芳しい評判を得られなかったフォランのモザイク壁画は、1898年には撤去され競売にかけられた。それらのモザイク壁画や下絵は現在一部がパリの装飾美術館とカルナヴァレ美術館に収蔵されている。傘を開こうとする女を描いた本作も、フォランがカフェ・リッシュのために描いた下絵の一枚である。 本作のモデルの女性は、頭にリボンをつけ、19世紀末頃から女性の定番の装いとなった「テーラード・スーツ」を身にまとっている。ジャケットは、1890年代以降に流行をみた肩に膨らみをもたせた特徴的なフォルムをしている。背景には多くの画家がモティーフとしてきた広告塔が見える。広告塔近くには傘を差している男性がおり、すでに雨が降り始めていることを窺わせ、女性もまさに傘を広げようとしている。こうした当時の何気ない日常は、挿絵などもよく手がけたフォランらしい主題といえる。
ARTIST作家解説
ジャン=ルイ・フォラン
Jean-Louis Forain1852-1931
画家兼室内装飾家の息子として、フランス北部のランスに生まれる。パリに出て短期間、エコール・デ・ボザールでジャン=レオン・ジェロームとジャン=バティスト・カルポーに師事した。素描家やコラムニストとして、さまざまな出版物を共同で出版し、風刺画的な描写で、その時代の社会を表すイメージを作品にした。エドゥアール・マネやエドガー・ドガ、印象派の画家たちとの関係が近く、パステル画、グァッシュを用いた水彩画、油彩画、幅広い技法、痛烈な作風、主題の選択などに彼らの存在が影響を与えたとみられる。
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INFORMATION作品情報

La construction moderne,Paris,15 December 1894, p121-124 Jean-Louis Forain,Petit Palais,2011
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