1646年/油彩、カンヴァス
70.8×61.5cm
SUMMARY作品解説
ラ・トゥールは、長い間スペイン派やイタリア画家などの作品群に紛れ込んでいて、20世紀初頭までは忘れ去られていた画家であったが、1930年代になって研究が進み、近年ようやく再評価がなされ、17世紀フランスの偉大な画家としての全貌が明らかになってきた(2005年3月に日本で初めてのラ・トゥール展が国立西洋美術館で開催された)。 本作は1973年5月にフランス南部で発見され、同年、ピエール・ローザンベールとフランソワ・マセ・ド・レピネによって出版された『ジョルジュ・ド・ラ・トゥール』の中で、作品番号53として世に初めて紹介された作品である。ローザンベールとクリストファー・ライトは、汚れていた画面に洗浄を施した後のこの作品を実見し、二人ともラ・トゥールの最上の作例であるという点で見解が一致した。ジャック・テュイリエをはじめ、その他の研究者の意見も同様である。約40点(日本国内には2点[1点は国立西洋美術館所蔵《聖トマス》])しか現存しない真作の1点。ただし、ライトを除くほとんどの研究者が、彼の息子エティエンヌとの共同制作の可能性を指摘している。 しかしながら、画面全体を支配する均衡の美しさ、立体感あふれる描写の力強さ、仕上げの繊細な質の高さ、そのどれをとっても、人はこのラ・トゥールの絵画世界に感動せずにはいられない。鋭い写実主義とカラヴァッジオ風のドラマティックな明暗法によって、煙草を吸うという風俗画のテーマでありながら、まるで宗教画のような深い精神性に満ちた表現を感じさせる。燃え木の光に照らし出された静謐な画面は、来るべき17世紀フランスの古典主義絵画の到来を感じさせてやまない。
ARTIST作家解説
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール
Georges de La Tour1593-1652
フランスの画家。ロレーヌ地方で生まれ、生地で生涯制作を行った。鋭い写実主義とドラマティックな明暗法を用いた。はじめは風俗画などを描いていたが、次第に精神性に満ちた庶民的宗教画を制作するようになった。人物を丸い幾何学的形態に抽象化し、心理状態を演出する強烈な灯火による明暗効果で記念碑性と静謐さを確立した。17世紀フランス古典主義の代表的画家として評価される。
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INFORMATION作品情報
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Provenance: Discovered in the south of France, May 1973 Cailleux, Paris French Private Collection
Literature: Pierre Rosenberg and François Mace de l’Epinay, Georges De La Tour, Vie et Œuvre, 1973, pp.174-175, no.53, pl.53 Benedict Nicholson and Chistopher Wright, Georges De La Tour, 1974,p.199, no.65F, fig.112 Christopher Wright, The French Painters of the Seventeenth Century, 1985, p201 Catalogue of Masterpieces of European, Oil Paintings, Samusung Foundation of Art & Culture, 1990, pl.no.8