『三国志通俗演義』や吉川英治氏の『三国志』を読んでみると、張飛が酒で失敗するシーンが多く、その印象が非常に強い(高校世界史の図説〔副教材〕にも登場するほどである)。しかし、歴史書の『三国志』を見てみると、張飛以外にもいろいろと酒にまつわるエピソードを持っている人物が登場する。ここではまず、魏の人物の酒に関するエピソードをご紹介したいと思う。
魏国ができた頃(213年頃)、曹操は禁酒令を出していた(醸造のために大量の材料が必要であったことや、旱魃などで穀物が不足したためなどがその理由であるが、実は劉備も禁酒令を出している)が、徐という人物は隠れて飲んでベロベロに酔っていた。そんな時、仕事の状況について聞きに来た監察官の趙達に徐は「聖人にあたっちゃってね」と答え、趙達がそのまま曹操に報告したら曹操は激怒してしまった。当時の酒飲みは清んでいる酒を聖人といい、濁っている酒を賢人と言っていたのである。この時は、鮮于輔という人物が「徐は慎み深い性格です。たまたま酔っ払って言ってしまったのでしょう」とフォローしてくれたおかげで、徐は刑罰を免れたという(『三国志』巻二十七徐伝)。この徐はのちに涼州(現在の甘粛省を中心とする行政地域)の刺史(長官)となってこの地域を安定させ、途絶えていた西域との通交を再開したり、諸葛亮の第1次北伐軍の一部を破ったりした人物でもある。
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