2011年5月より、「地上の天宮 北京・故宮博物院展」が、東京をはじめ日本各地で開催されます。
本展は、故宮博物院と東京富士美術館が企画し、成功を収めた1995年の「故宮博物院名宝展」以来、2度目の大規模な展覧会になります。
本展のテーマは、紫禁城を彩る后妃たちです。宮廷の女性たちの生活・風俗、精神世界が主題です。
展示内容は2部構成で、第一部は、故宮の皇后、皇妃についてです。展示は、①美しいふるまい、②楽しみ、③美装、④美食の4章からなります。
第二部は、故宮の子どもたちについてです。①教育、②生活の2章で構成されます。故宮の女性たちは、中国宮廷文化の発展に重要な役割を果たし、その文化は物質的文化と精神的文化が内包されます。
物質的文化は、皇妃たちの衣食住に表現されます。皇后、皇妃たちには厳しい等級制度や地位の高低が設けられ、装い、食卓、生活用品などに反映され、優れた文物が残されています。
これにより、物質文化の発展を見てとることができます。
精神的文化については、祭事、典礼、政務、娯楽および、教育と信仰などがあります。
宮廷での女性たちは、このように独立した文化をもっておりますが、同時に中国古代の伝統的な男性社会、つまり帝王文化の下に属しており、政権の維持と補助のための役割があります。 そのため、紫禁城を彩る后妃たちを理解することは、中国の帝王文化、宮廷文化および中国の文明と歴史を理解する重要なカギをにぎります。
今回、故宮博物院から、全部で238点を出品いたします。
絵画、金銀食器、琺瑯、玉、漆、刺繍などです。これらは、180万件余りの所蔵作品のなかから特別に厳選したもので、多くの作品が海外初公開です。なかでも、宋代の≪女孝経図≫は、千年の歴史を持つ貴重な作品です。
中国古代の女性が守らねばならない、母としての規範、賢明さ、女性の仁智、孝道などを絵画の形で、分かりやすく表現したものです。
同時にその高い芸術性と創造性で宋代の女性像の成熟した風貌を巧みに描きました。
また、当時、最高峰の宮廷画家たちが描いた肖像画は、長年、紫禁城に秘蔵されてきました。
例えば、乾隆帝の孝賢純皇后、西太后、雍正帝の妃たちを描いた「胤禛妃行楽図」など、
これらは高度な技法で、細部に至るまで、美麗で鮮やかな色彩がほどこされています。
后妃たちが子どもと過ごした、生活、娯楽、祝い事など、楽しく穏やかな生活場面を描いた絵画も出品されます。
また、宮廷の皇子たちのおもちゃ、皇子たちが描いた絵画、最後の皇帝・溥儀の漢字練習帳などがあります。
これらは、宮廷での特別な教育と厳格な学習が反映されています。
皇帝君臨前の、子どもとして短くて楽しい、ひと時の純粋な可愛い表現を見ることもできます。
また、光緒帝の皇后が婚礼時に使用した衣装など、后妃たちの輝きを放つ見事な服飾品も展示します。
服飾や刺繍技術のレベルの高さ、細やかさが鑑賞できるとともに、封建的な宮廷での地位の高低や厳格な等級思想とともに豊かな精神性が読み取れます。
さらに、大宴卓上に再現する食器セットは、紫禁城で実際に使用した食器、金銀の器など47点の作品からなり、宮廷内で皇后が催す宴会の華やかさを再現します。
このたびの、紫禁城を彩る后妃たちと子どもたちをテーマとする展覧会は、故宮博物院にとっても初めての試みです。 また、このような紫禁城秘蔵の精美な作品の大規模な公開はこれまでありません。 時空を超えて、后妃たちの華麗で優美な生活を鑑賞していただくことで、博大で精深な中国文化をより深く、理解していただけると思います。 北京・故宮博物院展が、中日双方の努力で、必ず大成功できると確信しています。
北京・故宮博物院副院長